健康情報と合理的配慮
要約
2013(平成25)年の障害者雇用促進法改正により,合理的配慮の提供義務と障害者差別の禁止に関する規定が新たに設けられた。合理的配慮の提供のためには,事業主は労働者の障害に関する情報を取得する必要があり,障害の内容や必要な配慮に関する情報を関係者間で共有したほうがよい場合も少なくない。他方で,差別禁止やプライバシー保護の観点からは,情報の取得や利用は制限される必要がある。このように,障害者雇用促進法の内部においても,情報の取扱いには齟齬が見られている。これに加え,日本には,個人情報保護法,労働安全衛生法,安全配慮義務,プライバシー保護など,さまざまな健康情報に関するルールが存在する。これらのルールは,情報の取得を事業主に義務づけたり促したりするタイプと,事業主による情報の取得や利用を制限するタイプとに分類することができる。確かに,いずれの法規制も重要であるが,健康情報の取扱いに関するルールに一貫性がなく,混乱を招いてもいる。本稿では健康情報に関する各種のルールを整理し,課題を明らかにしたうえで,今後のあり方について検討する。
2026年1月号(No.786) 特集●情報への配慮・配慮のための情報
2025年12月25日 掲載


