ジェンダー視点でとらえる公務非正規専門職の持続不可能性

要約

廣森 直子(大阪信愛学院大学准教授)

本稿では労働法と公務員法の境界線上に置かれて低待遇と不安定さが持続している非正規公務員について,公務非正規専門職(図書館司書,学校司書,相談支援職,女性関連施設職員,社会教育施設職員)で働く25人の女性へのインタビュー調査から,その持続可能性についての語りを分析した。半構造化インタビューの逐語録からコーディングによりキーワードを抽出し,カテゴリー化した。カテゴリーとして1. 専門職としてのキャリア形成の持続可能性(個人が働き続けること),2. 職業としての持続可能性(新しい世代の参入),3. 専門性のある公共サービスの持続可能性,の3つのカテゴリーを抽出した。専門職として現場を支えてきた彼女たちの語りからは,現在の待遇のまま専門職としてのキャリア形成は困難であり,専門職として人を育てられない職場となり,低待遇と見通しのなさから次の世代が入ってきてくれず,専門性のある公共サービスを持続的に提供していくことは困難になっていくことが懸念される。こうした専門職を女性が担ってきたことで,本来ジェンダー平等であるべき公務職場において,問題構造が持続してきた。


2025年10月号(No.783) 特集●非正規雇用の現在

2025年9月25日 掲載