雇用型労働プラットフォーム─マッチング,働き手の就業実態,そして政策課題
要約
ICT・AI技術の進歩は,オンライン労働プラットフォーム(Online Labor Platform:OLP)の活動を拡大させ,不安定なフリーランス就業を拡大させてきた。一方で,近年注目されているのが,雇用型労働プラットフォーム(雇用型労働PF)である。従来のOLPとは異なり,雇用型労働PFは働き手と企業を雇用契約においてマッチングする。しかし,こうしたプラットフォームにおけるマッチングの実態や労働者の就業実態は,ほとんど明らかになっていない。本研究では,代表的な雇用型労働PFであるタイミー社から提供されたデータと資料を用いて,その実態の一端を明らかにした。雇用型労働PFは,①採用・労務管理事務の代行,②スポット取引とでも言うべき即時性の高いマッチング,③企業や労働者にとって高い利便性を提供するシステムの3つを,ビッグデータとAIを活用することで実現している。提供される仕事は,ロースキルで最低賃金近傍の賃金水準が多いが,労働者にとっては,空き時間で働くことができ,勤務シフトを入れる等の煩わしさを避けられる。また雇用型労働PFの中には,労働条件の改善や正規雇用への橋渡しの仕組みを作っている企業もある。一方で,社会保険加入に関する課題が生じる可能性がある。雇用型労働PFにおける労働者の労働条件の改善には,個別企業の取り組みだけでなく,最低賃金の引き上げが重要である。また,タイミー社の取り組みは,非正規労働者の職業能力開発のあり方にとって重要な意味を持つ可能性がある。
2025年10月号(No.783) 特集●非正規雇用の現在
2025年9月25日 掲載