人事関連施策を組織内実践するための変革アプローチ

要約

一守 靖(事業創造大学院大学教授)

本論文は,企業が人事関連施策を変革する際に適切な変革アプローチについて検討したものである。具体的には,企業変革の目的と方向性が異なる2つの企業の変革アプローチを比較し,それぞれがバークとリットウィン(Burke and Litwin)の変革モデル,およびワイクとクイン(Weick and Quinn)の変革プロセスのどちらに沿って進められたかを分析した。分析の結果,組織変革の規模が大きく,組織文化の再構築など中長期的なアプローチが求められる場合には,バークとリットウィンのモデルが適用されやすいことが確認された。このモデルでは,変革に向けたリーダーシップ,変革チームの組成,制度やプロセスなど構造的な変更が重要な役割を果たしていた。一方で,変化が連続的かつ適応的に進む環境では,ワイクとクインのアプローチがより適合し,漸進的な取り組み,組織メンバーの継続的な関与やモニタリングを通じた変革が進められていた。本研究は,組織の変革アプローチの選択において,経営環境や組織の特性が影響を与えることを明らかにし,それぞれの状況に応じた最適な変革モデルの適用条件を提示した。これにより,企業がラインや関連部門を巻き込んで従来施策を変革する際の戦略的な指針を得ることができる。


2025年8月号(No.781) 特集●人事施策はいかに浸透するか

2025年7月25日 掲載