サーバント・リーダーシップは持続できない?─SLの実践におけるリーダーの自己養生的アプローチについての探索的研究
要約
本論文の目的は,サーバント・リーダーシップ(SL)を志向するリーダーはSLによる自身の消耗にどのように対応するのか,という問題の検討を通じて,SLの持続性を高めるためにリーダーが個人レベルで活用可能なマネジメント戦術を提示することにある。SLはフォロワーや組織に対する幅広い貢献を期待できる一方,SLの行為主体であるリーダー自身を疲弊させるというリスクが潜在する。先行研究は,SLがリーダー自身に及ぼす心理的影響と境界条件については論じているが,リーダーがSLを持続させるために個人レベルで活用できる実用的知識の提示は十分ではない。本論文は,実際の組織でSLを実践してきたリーダー19名を対象とした質的調査を通じて,SLに従事するリーダーたちが,自身の負担を緩和し活力を高めるための自己養生的なアプローチを行っていることを主張する。本研究の内容は,リーダーがSLを持続させるためにはフォロワーのニーズや成長を志向したアプローチだけでなく,SLに従事する自分を守るための知識と行動を持ち,両者を相補的に実践する必要があるという示唆を提示する。
2025年8月号(No.781) 特集●人事施策はいかに浸透するか
2025年7月25日 掲載