働き方の創造的変革を実現するチーム・プロセスとコミュニケーション
要約
本稿では,働き方を創造的に変革する取り組みは,組織の持続可能性を高めるために不可欠であるという視点に立って,そうした変革を実現に導くチーム・プロセスとコミュニケーションのあり方について社会心理学の研究知見に基づきながら論考した。慣れ親しんだ旧来の働き方に拘泥することなく,柔軟性と創造性をもった新しい働き方へと転換していくには,単に就業制度を刷新するだけでは不十分であり,成員自身が,自分たちの働き方を非効率的なものにしている問題や原因に気づき,それをチーム内で率直に指摘,発言して,成員同士で共有し,対応策・解決策を自律的に協議し,実践するチーム・プロセスの構築が課題となる。ただ,変革を実践する過程では,成員の心理的な抵抗や受け身の姿勢に加えて,組織・チームレベルで見られるサイロ化等の硬直化現象や集団浅慮,集合的無知といった組織心理学的要因が働いて,抑制的な影響をもたらすことを予め理解しておく必要がある。心理的安全性の醸成に有効な方略として,定例的なダイアローグやワン・オン・ワンの機会を増やす取り組みの事例を紹介した。それを参考にすれば,働き方の創造的変革を実践していくためには,管理者のトップダウンの指示や命令に期待するだけでは不十分で,対話と協調を重視してチ−ム・コミュニケーションを活性化し,心理的安全性の醸成を促進するガバナンス型のマネジメントを充実させることが重要だと考えられる。
2025年8月号(No.781) 特集●人事施策はいかに浸透するか
2025年7月25日 掲載