自治体のデータ利活用と研究者とのコラボの現状と課題

要約

児玉 直美(明治学院大学教授)

小原 美紀(大阪大学大学院教授)

佐野 晋平(神戸大学大学院教授)

森山 智彦(JILPT副主任研究員)

本稿は,自治体の業務データ利活用と研究者との協力に関する現状と課題を明らかにし,自治体データの利活用の今後の取り組みの参考とすることを目的としている。自治体が業務データを利活用する際,データ形式の不統一や法的な整理,内部・外部人材の確保と育成が課題となる。特に,政策を実施する部門とデータを扱う部門の連携,職員の理解と経験の共有が重要である。また,内製化の必要性が高まる中で,人材育成の工夫や職員の配置,業務との両立も課題である。研究者との協力は,分析の専門性だけでなく,政策立案の透明性と客観性を高める点でも有効である。協力の形はさまざまであるが,継続的な関係構築と信頼が鍵となる。研究者と自治体では,目的や関心に違いがあるため,相互理解のうえで柔軟な仕組みを構築することが求められる。最後に,支援制度や取り組み事例を紹介し,実践のヒントを示す。


2025年6月号(No.779) 特集●公的統計データ利用の現状と課題─行政と研究者のコラボのために

2025年5月26日 掲載