ユーザーから見た政府統計の二次的利用─評価と課題
要約
本稿は,政府統計のユーザーの視点から,日本の経済学の実証研究におけるミクロデータ利用の状況をエビデンスに基づいて概観するとともに,政府統計の二次的利用の意義や課題を考察する。過去20年間に学術研究における政府統計ミクロデータ利用の仕組みが整備されてきた。特に2010年代半ば以降は,証拠に基づく政策立案(EBPM)と統計制度改革が連動する形で進められ,二次的利用の制度はさらに改善した。実際,政府統計ミクロデータを用いた研究論文は増加している。日本のデータを用いた国際的にも評価される実証研究を増やしていくため,データ提供に要する期間の短縮,審査の簡素化などを通じて,政府統計の二次的利用のハードルをさらに低くすることが期待される。ただし,EBPMをさらに推進するためには,政府統計の二次的利用拡大と同時に,政策・行政情報を広く公開して多くの研究者が利用できるようにすることが望ましい。
2025年6月号(No.779) 特集●公的統計データ利用の現状と課題─行政と研究者のコラボのために
2025年5月26日 掲載