フリーランスへの団結権保障は「集団的物乞い」の承認で足りるか─EUにおける経緯と議論から
要約
フリーランスを,(少なくとも雇用労働のような狭い意味での)労働者たる地位を前提とせずに保護しようとした場合,2023年フリーランス保護法のような個別的労働法上の規律のアナロジーとは別に,集団特に労働組合を通じた保護も可能である。ただしそのためには,団体交渉を行い労働協約を結ぶことが,競争法によって違法評価されないことの保障が求められる。この点,本稿が参考にした欧州連合(EU)では,既に司法と行政の双方において,かかる方向での発展がみられる。すなわち,一方ではいわゆるAlbanyの例外法理が偽装的自営業者に適用され,他方では,競争法執行当局のガイドラインによりそれを越えた範囲の団体交渉・協約締結が承認されたのである。しかもそうした発展は,いまや,EU基本権憲章という憲法的規範のレベルで正当化されうる状況にある。しかしEUは,過去のトラウマにとらわれて,同時に団体行動権を保障するための政策は展開できていない。団体交渉権の保障は,圧力手段としての団体行動権保障を伴わなければ,「集団的な物乞い」の自由に過ぎない。ILO第87号条約の解釈も参考にしつつ,フリーランスに対する効果的な団体行動権保障が構想されるべきである。
2025年5月号(No.778) 特集●ストライキ
2025年4月25日 掲載