ストライキと労働組合再生の道─アメリカを事例として
要約
本稿では,昨今のアメリカにおけるスト急増についてその実態を概観したのち,それが労働運動の再生に結び付く可能性について検討する。まず経営側の一貫した反労働組合主義が存在すること,それは法制度のなかにも埋め込まれていること,従来労働運動の主流を占めてきたビジネス・ユニオニズムは基本的にはそれに順応した形で運動を展開し,政治的には民主党の一圧力団体としての活動に終始してきたことを確認する。こうした労働運動は,伝統的に白人男性労働者を中心としたものであり,新しい社会運動や社会の多様化に対応した組織化に失敗し,グローバル化のなかで強化された経営者側の攻勢に対抗することができなかった。その限界を打破すべく登場したのが社会運動ユニオニズムであり,昨今のストライキを担う労働組合の多くは,こうした流れに属するものである。しかし積極的行動主義を一時的現象に終わらせず,組織強化や構造改革に結びつけるためには,労働者が団結し,資本の自由な搾取を規制する階級的視点が必要である。産業,文化,人種の垣根を超えた階級的視点は,アメリカの労働運動の歴史において排除されてきたものであり,その実現はきわめて困難であるが,唯一の可能性としてある。
2025年5月号(No.778) 特集●ストライキ
2025年4月25日 掲載