中核的自己評価がネットワーキング行動に及ぼす影響─日本企業の中高年社員を対象に
要約
コロナ禍を経て従業員のコミュニケーションの形態が変化しても,組織内外の他者との関係性を構築するネットワーキング行動の重要性は変わらない。本研究の目的は,年齢とともにネットワーキング行動が減少傾向にある日本の中高年社員に注目し,個人特性としての中核的自己評価がネットワーキング行動に及ぼす影響と,それらの関係を調整する職務特性の影響を検討することである。自己制御理論の観点から,職務遂行などの目標を達成するための行動としてネットワーキング行動を捉え,中核的自己評価が組織内外のネットワーキング行動に与える主効果と,職務特性としてのスキル多様性の調整効果について仮説を導出し検証した。インターネット調査により収集した日本企業に勤務する50~65歳の正社員255名のデータを分析した結果,中核的自己評価は組織内外のネットワーキング行動を促進することが明らかになった。また,スキル多様性が高い場合に,中核的自己評価は組織内ネットワーキング行動を促進することが示された。これらの結果をふまえると,中高年社員の組織内外のネットワーキング行動を促すには,中核的自己評価の高い社員を採用することが重要になる。加えて,中核的自己評価の高い社員に対して多様なスキルを必要とする職務を設計したり,そのような職務に中核的自己評価の高い社員を配置・登用することが組織内のネットワーキング行動に有効である可能性が示唆された。
【キーワード】雇用問題一般,人事労務一般,職業心理
2025年2・3月号(No.776) 公募特集●組織における人の管理の実態・背景・効果
2025年2月25日 掲載