論文要旨 私立中高校教員がキャリア形成をどう考えているか
─首都圏私立中高校5校の教員75人へのインタビュー調査結果の分析

古市 好文(法政大学大学院政策創造研究科博士後期課程)

私学教員のキャリア形成を考察する場合、教員の意識を踏まえるべきと考え、2010年10月から12月に至る約2カ月余の期間に、首都圏私立中高校5校の専任教諭合計75名にインタビューを実施した。分析の結果分かったことは次の四点である。

第一に、私学においては、市場競争という現実が絡み、あらたな教育理念と方針の策定となって学校アイデンティティの再構築となる。私学の教員は、その学校アイデンティティを評価して自己とのずれを修復しつつ、教師アイデンティティを再構築する。

第二に、学校改革によって学校と対象生徒が変化する。その結果、学校全般のあらたな課題が生まれ、組織の再編成にもつながる。教員はこれらの変化に対して、自己の職業生活とキャリア形成との関わりで、現状の組織を評価しつつ自己のキャリアを考える。

第三に、個々の教職生活では、教師アイデンティティの“揺らぎ”を経験し、その“乗りきり”と教職アイデンティティの再構築には、教員の同僚性と協働を含めた労働環境が要請される。

第四に、学校組織での役割を担い、自己の能力開発と研修をともなう運営組織への参画とその経験とによって、教育と学校づくりの一員としての意識形成につながる。

以上によって、私立は組織規模が小さく、個別的かつ分散的であり、一律に論じられないが、逆説的には、微小の内部労働市場のなかで、教員が成長できなければ学校組織は活路を見いだせないということを示唆しているといえよう。

2014年特別号(No.643) 自由論題セッション●第2分科会(職場とキャリア形成)

2014年1月24日 掲載