論文要旨 高齢者におけるボランティア供給の決定要因に関する実証分析

馬 欣欣(京都大学大学院薬学研究科医薬産業政策学講座特定講師)

日本では、阪神・淡路大震災以後、ボランティア活動に参加する者が多くなってきたが、欧米に比べ、日本でボランティア活動に参加する者がまだ少ない。ボランティア活動の参加を促進するため、ボランティア供給のメカニズムに関する実証研究は重要な課題となっている。本稿では、JILPT2009年「高齢者の雇用・就業実態に関する調査」の個票データを活用し、60~69歳代の高年齢者を分析対象とし、社会活動を類型化した上で、どのような要因が高齢者のボランティア供給に影響を与えるかに関する実証研究を行った。

主な結論は以下の通りである。第1に、仮説の検証結果については、(1)非勤労所得が高いほどボランティア活動に参加する確率が高い傾向にあり、消費モデルが支持された。(2)高齢者のボランティア活動は先行研究で検証された人的資本投資モデルに当てはまらない。(3)過去の職歴が調査時点の高齢者のボランティア活動に参加することに影響を与えることが確認され、人的資本活用仮説が検証された。

第2に、他の要因については、(1)市場賃金が高いほどNPO専念型者になる確率は、就業専念型者および両立型者になる確率より低い。(2)配偶者がいない場合に比べ、配偶者があり、しかも配偶者が正規者である場合、NPO専念型者になる確率は就業専念型者になる確率より低い。実証分析の結果により、高齢者のボランティア活動への参加を促進するため、過去の職歴で蓄積された人的資本を活用できる、中高年者向けのボランティア活動の推進を検討すべきであることが示唆された。

2014年特別号(No.643) 自由論題セッション●第1分科会(高年齢者の労働)

2014年1月24日 掲載