論文要旨 大企業の中高年齢者(50歳代正社員)の教育訓練政策と教育訓練行動の特質と課題─65歳まで希望者全員雇用時代における取り組み

大木 栄一(玉川大学経営学部教授)

鹿生 治行(高齢・障害・求職者雇用支援機構雇用推進・研究部研究開発課所属)

藤波 美帆(高齢・障害・求職者雇用支援機構常勤嘱託(調査研究員))

平成24(2012)年度の高年齢者雇用安定法改正に伴い就業期間が長期化し、それに対応する形で、60歳代前半層(「高齢社員」)への期待役割が変化してきている。その変化とは、著者らが参加したアンケート調査の再分析結果から明らかなように、「第一線で働く能力」よりも「現役世代の力になる能力」である。こうした傾向は、高齢社員の雇用形態が非正社員である企業ほど、言い換えれば、雇用形態として非正社員を採っている大企業ほど、顕著に見られる傾向である。

さらに、「現役世代の力になる能力」が必要であると考えている企業ほど、「専門知識・技能取得のための研修」よりも「意識改革に関する研修」(仕事の仕方や姿勢を養成するための研修)が重要であると考えている。その理由は、高齢社員にとって、60歳以降になってから、これまで培ってきた自らの仕事の仕方や姿勢を変えることは難しいので、それを支援するための研修体制を職場の管理職にだけに任せるのではなく、企業全体で整備することが必要であると考えている。

しかしながら、50歳代の正社員を対象にした「60歳以降の職業生活について考える研修」を「実施している」企業は約1割に過ぎず、さらに、実施している企業のなかでも独立した研修として実施している企業は非常に少なく、「退職準備のための研修」のなかで実施している企業が多く、現状では、「意識改革に関する研修」が十分に整備されているとは言えない状況にあり、こうした研修を整備することが高齢社員の活用にとって今後の大きな課題の1つである。

2014年特別号(No.643) 自由論題セッション●第1分科会(高年齢者の労働)

2014年1月24日 掲載