論文要旨 高齢層から若年層への技術伝承の現状と課題
─建設業界における検証

山﨑 雅夫(法政大学大学院政策創造研究科博士後期課程)

本研究の目的は、高齢層から若年層への技術伝承の現状と課題について考察することである。建設業界の企業と研究会において議論するとともに個別のインタビューを実施した。

このテーマを取り上げた理由は3つある。第1に、団塊の世代が65歳を迎え、蓄積された技術が受け継がれないまま損失する恐れが現実となりつつあると考えられるからである。第2に、少子化社会において継承者が十分に確保されていない中で、何を伝えねばならないかの選択が迫られているためである。第3に、65歳を超えつつある世代から技術を受け継ぐには、60歳定年以降の雇用をどう実現するかという視点からみておく必要があるためである。

本研究では、研究の蓄積がまだほとんどない建設業界を対象として検証している。伝えるべきものを把握するために、概念「直観」を形成している。建設業界の企業と研究会による議論の成果である。「直観」とは、問題発見・原因究明・問題解決を同時に瞬時にこなす能力である。また、技術伝承において高齢層の存在は必要不可欠である。継続雇用実現のための取り組みについて、個別のインタビューを行った。

結果として、飛島建設の「技術伝承士」という取り組みを発見した。円滑な技術伝承のためには、高齢層と若年層が共に密度の高い経験をしていく必要があると筆者は考える。その中核とすべきは、概念「直観」であり、多くの良質な経験をしてきた高齢層技術者の存在である。残された時間の間に、既存の枠を超えた取り組みが急務である。

2014年特別号(No.643) 自由論題セッション●第1分科会(高年齢者の労働)

2014年1月24日 掲載