論文要旨 労使紛争の現状と政策課題─法律学の立場から

中窪 裕也(一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)

本報告は、労使紛争に関する学際的な議論の基礎を提供するために、紛争解決システムの発展経緯と現状を確認し、いくつかの指摘を行うものである。

日本の戦後労働法制においては集団的な労使紛争が重視され、労働争議の調整と不当労働行為の救済という2つの場面で、労働委員会が重要な役割を果たしてきた。しかし、近年では集団的な紛争が少なくなる一方で、特に1990年代以降、個別紛争が大きく増加し、裁判手続に依存する従前の制度の不十分さが浮き彫りとなった。

これに対処するために、2000年代には個別労働紛争解決促進法および労働審判法が制定され、さらに都道府県労委でも個別紛争のあっせんを行う等の進展があった。そのことは積極的に評価すべきであるが、(1)その質の維持とさらなる改善、(2)法のエンフォースメントの強化、(3)集団的紛争の再定義、(4)いわゆる従業員代表制の検討、という課題がある。

2013年特別号(No.631) メインテーマセッション●労使紛争の現状と政策課題

2013年1月25日 掲載