論文要旨 母子家庭の母の就業支援─その効果的な職業訓練施策のあり方

田中 恵子(法政大学大学院経営学研究科研究生)

N市における母子家庭自立教育訓練給付金支給事業(教育訓練:短期訓練)と母子家庭高等技能訓練促進費等支給事業(高等技能:長期訓練)との業務データをもとに、母子家庭の母の経済的な自立と両職業訓練施策との関係を検討した。

訓練期間の長短や訓練内容の専門的なレベルの違いもあり、教育訓練受講者では訓練前後での雇用形態に大きな変化が認められないのに対し、高等技能受講者では修学前後の雇用形態に明確な変化が生じており経済的にも自立する傾向が確認できる。そして、高等技能の修学者は受講前の準備段階からより計画的に行動する傾向にあるように思えた。

そこで、この2つの訓練の受講者の属性、母子家庭となる前の職歴、母子家庭となってから訓練に至るまでの職歴、相談期間、相談回数、相談内容、受講後の就業状況などを比較分析し、自立出来た人と出来なかった人との特徴を整理した。

その結果、教育訓練の受講者は、訓練までの相談期間が短く、受講内容の相談も少なく、コース選択を拙速に進める傾向があり、受講後も受講資格を活かしきれていない例が多い。一方、高等技能の修学者の就業相談は学費や生活費の貸付など経済的な相談、受験、メンタルや育児相談などが多い。また、相談開始時期は受講開始時期の半年前が一番多く、中には何年も前から相談に来ており、将来の職業生活設計について計画的に行動している点に特徴がみられた。

2013年特別号(No.631) 自由論題セッション●Cグループ

2013年1月25日 掲載