論文要旨 嘱託社員(継続雇用者)の活用方針と人事管理
─60歳代前半層の賃金管理

藤波 美帆(高齢・障害者雇用支援機構常勤嘱託調査研究員)

高齢社員の人事管理を考えるにあたって重要なことは、全ての企業に通用する唯一最善の「あるべき人事管理」はなく、それは高齢社員に対する活用戦略に規定されるという視点と、その労働意欲に配慮する「公平性」の視点の双方を持つことである。とくに、高齢社員の場合には、現役社員との間の「公平性」が問題となる。

そこで本稿では、高齢社員用人事管理の特徴を現役社員対象の人事管理との違いの面から分析した。アンケート調査に基づいて、高齢社員の活用方針を現役社員との継続性から捉えてタイプ分けすると4つのタイプに分かれる。タイプ別にみた企業構成は「仕事内容同じ・労働時間変わるタイプ」が45.0%で最も多い。その活用タイプと高齢社員用人事管理との関係をみると、社員格付け制度は「仕事内容が同じタイプ」から「仕事内容が変わるタイプ」になるほど導入する企業が減少し、基本給では、決定方式をみても、賃金水準をみても、「仕事内容同じ・労働時間変わるタイプ」になるほど、高齢社員は現役社員に近い扱いを受けている。活用タイプと高齢社員活用の評価との関係をみると「仕事内容が同じ」であるほど企業の満足度が高い。

2013年特別号(No.631) 自由論題セッション●Cグループ

2013年1月25日 掲載