論文要旨 現代における個別化された労使関係の研究方法について

三吉 勉(同志社大学大学院社会学研究科博士後期課程)

本論文は、日本企業のホワイトカラー職場における「コミュニケーション」を仕事の量と質を定めるための手続きと捉え、その問題を正しく把握するために労使関係研究の方法を使い、仕事決定の手続きルールに関するフレームワークを提起することを目的としたものである。

労使関係研究は仕事の量と質および反対給付を決めるためのルールの研究である。職場におけるコミュニケーションは集団レベルから個人レベルまでがあり、特に個人単位の労使関係がルールとして記述できるのかということが方法的な課題となる。そこで、仕事の量と質を決める手続きルールに、「集団」「個人」というルール適用の単位に加えて「公式」「非公式」という概念を導入し、2軸で手続きルールを分類することとした。

個人単位の具体的な仕事や労働時間が最終的にどのように決定されているかを解明するには、「個人-非公式」の領域を解明することが重要である。そのためには、「集団-公式」や「個人-公式」の手続きをいかに「個人-非公式」の領域に広げ、最終的な仕事が決定されているのかを解明することが必要となる。コミュニケーションの問題も、手続きルールという視点で強化すべき領域を特定し解決に向けた取組みを行う必要があろう。

特に日本で顕著となっている労使関係の分権化・個別化が先進諸国でも進行している中、この方法はこれからの労使関係研究に不可欠なフレームワークの一つとなると考えられる。

2013年特別号(No.631) 自由論題セッション●Cグループ

2013年1月25日 掲載