論文要旨 人材育成施策としてのOJT・Off-JT・自己啓発が従業員のキャリア形成に及ぼす影響について

佐藤 雄一郎(法政大学大学院政策創造研究科研究生)

本稿では、企業で展開されるOJT(on-the-job training)、Off-JT(off-the-job training)、自己啓発(self-development)に代表される人材育成施策が、それぞれどのような形で従業員の職務遂行能力の向上やキャリア形成に影響を及ぼしているのかを考察した。

従属変数としてのキャリア形成を、管理職権限の保有と専門性の保有という観点で捉えた。調査方法としては、量的調査を用いた。男女計7187人を対象とする因子分析とその結果を踏まえた男性、大学卒以上の学歴で、正社員規模1000人以上の927名に対する階層的重回帰分析による。

結果として、(1)管理職として任用され、権限を持つために必要なことは、上司との業務を通じた関係性であり、上司からの優しい指導・援助ではないこと。会社からの教育訓練機会(Off-JT)は有効であったが、自己啓発など主体的な学習行動はプラスの影響を与えていなかった。(2)専門性を保有し、向上させていく上で、自己啓発は有効であったが、OJTやOff-JTは基本的に有効でなかった。

特に(1)に関して、管理職としてのキャリア形成に自己啓発が直接的な影響を与えておらず、自己啓発を行わなくても管理職になれる現状が推察され、(2)に関して、専門性の保有に会社からのOJTやOff-JTが十分に役立っていないことが推察された。どちらも今後に向けての課題を残したものと思われる。

2013年特別号(No.631) 自由論題セッション●Bグループ

2013年1月25日 掲載