論文要旨 入管政策の動向と労働市場─ポイント制の検討を中心に

早川 智津子(岩手大学国際交流センター准教授)

2009(平成21)年の改正入管法により、2012年7月9日から、新たな在留管理制度が実施された。このような中、法務省は、高度人材に対するポイント制を2012年5月7日から導入した。

ポイント制の導入により経済社会のグローバル化の中で求められる高度人材の獲得が進むことが期待される一方、ポイントの設定のしかた次第では、必ずしも高度とまでは言えない人材が本制度の中で受け入れられ、その結果、国内の労働市場への悪影響が生じることが懸念される。

本報告では、まず、わが国のポイント制導入の背景とその概要を述べ、次にポイント制を導入している、カナダ、イギリス、シンガポール、オーストラリアを参考に、各国の入国管理制度に照らしつつ、わが国の制度の課題を抽出したうえで、労働市場への影響に配慮した外国人労働者受入れ制度の検討を試みた。

本報告での検討の結果、わが国において、高度人材の受入れを促進するという政策理念自体は、意義のあるものであるが、今回のポイント制では、対象3分野の一つである「高度専門・技術分野」において、必ずしも高度・専門的とまでは言えない労働者の受入れが促進されるおそれがある、と判断した。

受け入れる外国人の層を見極め、それに応じた労働市場の影響に配慮した制度を作ることが重要と考える。

2013年特別号(No.631) 自由論題セッション●Aグループ

2013年1月25日 掲載