論文要旨 認定職業訓練(共同職業訓練)が提供するサービスの規模・構造と課題─再編・強化の方向性を探る

大木 栄一(東京大学社会科学研究所特任研究員)

認定職業訓練は近年、減少傾向にあるが、この20年間の実績を確認すると、多くの人材の育成に貢献してきたことは間違いないことがわかる。とくに、認定職業訓練のなかでも7割以上を占める「2以上の事業主が共同で行うもの又は連合会などの団体が行う共同職業訓練」(「認定共同職業訓練」)の貢献は大きい。その特質を整理すると以下のようになる。

認定共同職業訓練が提供するサービス市場の構造について、組織(運営団体)の特徴の観点からみると、第1に、職業訓練法人が4割を占めているが、中小企業事業主の団体も多く占めており、1社では教育訓練を行うには経営資源の限界がある中小企業の教育訓練を担ってきている。第2に、組織の所在地は民間の教育訓練プロバイダーが多く所在する東京・大阪・名古屋等の大都市圏よりも地方圏に多く所在しており、地方の中小企業の人材育成を支えてきている。

他方、教育訓練サービスの状況の観点からみると、第1に、中小企業の新入社員レベルから中堅社員レベルを対象として、時間当たり受講料が安い、研修時間の長いコースを提供してきた。第2に、訓練分野についてみると、公共職業訓練が主に提供している「土木・建設・設備系」及びモノづくりの基盤技術である「機械・金属・自動車」分野を担っており、公共職業訓練と補完関係にある。

しかしながら、訓練生数が減少している状況を改善するためには、現在の仕組みに新しい施策を加えていくことが必要になる。1つは、認定共同職業訓練校自身に関わることであり、訓練機能だけでなく別の付加価値機能を付けることである。因島技術センターでは、地域の産業振興(市の産業活性化策)と職業訓練がセットになっている。他方、東京都鍍金工業組合高等職業訓練校では、めっきに関する研究開発と職業訓練がセットになっている。このプラスαの機能は、新しいコース設定や新しいカリキュラムの開発に大きく貢献するだけでなく、職業訓練の利用企業からすると、職業訓練校の魅力の「見える化」につながっている。

もう1つは、公共政策の観点からみると、2つの施策が必要である。1つは、認定職業訓練費補助金の交付基準の緩和を検討すること、もう1つは、都道府県独自の財政上の支援が必要なことである。前者については、長期間の訓練課程における1訓練科の補助金交付基準の緩和や補助金の交付要件である1訓練科当たりの訓練生数5人以上かつそのうち会員事業所の従業員数が2/3以上という基準を満たさなければならないという基準の緩和等である。後者については、長期間の訓練課程において、新たに補助対象になった訓練科が年度途中に基準を下回った場合に都道府県独自の支援策を講じることなどが考えられる。

2013年特別号(No.631) 自由論題セッション●Aグループ

2013年1月25日 掲載