論文要旨 有期労働契約の雇止め制限法理に関する実証分析

戸田 淳仁(リクルートワークス研究所研究員)

本研究では、有機雇用者に対する雇止めに対して法定化される前の時期において、有期雇用者の契約更新拒絶についてその法的有効性が判断される雇止め制限法理に注目し、判例をデータ化することによって分析を行った。

特に、正社員に適用される解雇権濫用法理が有期の雇用契約にも類推適用される条件、そして解雇権濫用法理が類推適用された事件が無効になる時の条件について探索を行った。その結果以下のことがわかった。

第1に、解雇権濫用法理が類推適用されにくくなる条件としては次のものがある。すなわち、契約更新の前に面談の場を設けて契約内容について確認するなど契約更新の手続きを厳格化させること、できるだけ正社員と異なるような仕事内容にすること、契約更新が継続する期待を抱かせるような発言を使用者がしないことがある。

第2に、契約更新回数や通算勤続年数は他の条件を一定とすると、類推適用される確率には有意な影響を与えていないことが分かった。

第3に、もし類推適用された場合、仕事量の減少や新規に社員を採用していたこと、勤務態度に問題があることが解雇無効に影響を与えるということが分かった。

このような結果をもとに、2012年8月10日に公布された改正労働契約法の意味について議論を行った。

2013年特別号(No.631) 自由論題セッション●Aグループ

2013年1月25日 掲載