特集趣旨「テーマ別にみた労働統計」

現実的問題に学問がどう関わるかについてはいろいろ考え方があるが、学問それ自体は現実的問題から離れて成立しなくなって久しい。こと労働研究に限っては、日本に限らず現実に起こった事象やデータをまったく意に介さず研究を遂行することはほぼ不可能になりつつある。

こうしたデータの重要性を強調するために、本雑誌では折に触れて特集を組んできた。1995年1月号では、『労働統計を読む』と題し大小32の政府統計を取り上げ、それぞれの基本的性格や特徴を見開き2頁で解説した。当時大学院生だった筆者は、この号だけ自費で購入して現在でもマニュアルとして書棚に備え続けている。およそ10年後の2006年6月号では、『あらためて「データ」について考える』と題しパネルデータと個票へのアクセスという二つの側面からデータの必要性と現状について論考を集めた。そして今回、1995年1月号の特集より18年の歳月が経過し、政府統計も様々な改変を被ったことから、より最近の事情を反映させた労働統計を解説する特集を、初学者向けの4月号で組むこととした(正直なところ、1995年1月号の記事が多少古くなり、使いにくくなってきているという事情もある)。

本特集を組むにあたっては、統計ごとの解説ではなく、労働研究の概念を基本に複数の統計を比較しながら解説するよう執筆者に要請した。近年では統計部局のウェブサイトも整備され、各統計の基本概念や調査の注意事項等は比較的簡単に知ることができる。労力をかけて調べなければならないのは、統計に用いられる諸概念の相互比較や労働研究における位置づけといった少々高度な論点に移っているだろう。本特集では、実際にその主題の研究に携わる研究者に、主要な概念と統計との関係や研究における統計情報の位置づけについて簡単にまとめていただいた。執筆者によっては、研究のネタも提示してくださっている方もいる。「そんなこともわかっていないのか」と感じた読者諸氏には、是非論文にして投稿していただきたい。

印刷用(PDF:262KB)

2013年3月25日 掲載

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