論文要旨 スウェーデンにおける若年者雇用と職業能力開発
─高等職業教育(YH)を中心に

両角 道代(明治学院大学法学部教授)

スウェーデンでは、若年者の失業や社会的排除が深刻な社会問題となっており、若年者は障害者や移民などと並んで社会的支援の必要な集団と位置づけられている。若年者雇用政策は、包括的な若年者政策の一環として、また、すべての人が働いて社会を支える「就労原則」を基本理念とする労働市場政策の一環として実施されている。

自分に適した仕事を模索する若年者への支援の中心は職業能力開発である。政府は、社会的変化によって労働のあり方や求められる職業能力が大きく変わりつつあることを受け、あらゆるレベルにおける職業教育訓練の充実を図っている。その一環として新設された高等職業教育(YH)は、中等教育修了後にいったん就職した者を主たる対象として、キャリアアップや転職を支援する制度である。YHは2年間のフルタイム教育を基本とし、多様な教育訓練主体の参入を促して、専門的な理論教育と職場での実地教育を効果的に組み合わせ、高度な知識と経験を備えた人材の育成を図っている。

また、スウェーデンでは長期にわたるフルタイムの教育訓練受講を可能にする休暇や所得保障の制度があり、いったん就職した後も就労と教育の間を行き来できる仕組みが法的に整備されている。スウェーデンの試みは、国家による「キャリア権」保障の一例と見ることも可能であり、日本の若年者雇用政策を考える上でも参考になる点があると思われる。

2012年特別号(No.619) メインテーマセッション●若年者雇用をめぐる政策課題

2012年1月25日 掲載