論文要旨 大卒就職率はなぜ低下したのか─進学率上昇の影響をめぐって

太田 聰一(慶應義塾大学経済学部教授)

本稿は、文部科学省『学校基本調査』の集計データを用いて、進学率の上昇が大卒就職率に及ぼす影響を明らかにしようとした。

時系列データを用いた分析の結果、新卒求人倍率が一定のもとでの4年前進学率の上昇が就職率の低下に影響を及ぼしたことが判明した。一方、新規大卒者の就職機会(新卒求人倍率)は大卒者数や進学率の変化とは相関していなかった。

これらの事実から、最近の大卒就職率の低迷の背景には、景気後退による新卒求人倍率の低下のほかにも、進学率の上昇に伴う大卒者の「質」の変化と、それに伴って生じる求人と求職者とのミスマッチに原因が求められる。

さらに、男性の設置者・学科別データを用いた分析によると、私立大学の就職率の方が国公立大学よりも進学率や新卒求人倍率に敏感に反応していることが明らかになった。

2012年特別号(No.619) メインテーマセッション●若年者雇用をめぐる政策課題

2012年1月25日 掲載