論文要旨 企業の人材採用の動向─リーマンショック後を中心に
リーマンショック後の、企業の人材採用の動向はどのようなものだろうか。この点を明らかにするために、アンケート調査を用いた量的な分析と、17社に対するインタビュー調査を用いた質的な分析を行った。
その結果、キャリア採用(中途採用)が停滞し、大手企業を中心に新卒採用の重視という現象が確認された。無論、企業のグローバル化の進展により、日本への留学生や、外国語能力の高い人材の採用という変化は発生している。しかし、それにもかかわらず、採用の中心は新卒者であった。
では、なぜ企業は新卒採用を重視するのだろうか。新卒者を何色にも染め上げられる「白い布」に例え、企業はそれを選好するという「白い布仮説」がある。分析の結果は、「白い布仮説」の妥当性を示唆するものであった。
しかしまた、キャリア採用では採用時の要求水準が明確になっているので、それを考慮するあまり、その先のキャリアまで考慮した上での適材の採用ができなくなりがちなことがわかった。それを避けるために、新卒者採用が選好されるようである。
分析からは、このような傾向が見られたが、実は同時に、景気が回復すれば、これまで採用人員を絞ってきた大企業でのキャリア採用意欲が高まることも分析結果からは推測できた。ただし、そのような状況になっても、企業は採用の基本を新卒者採用に置き続けるだろう。
2012年特別号(No.619) メインテーマセッション●若年者雇用をめぐる政策課題
2012年1月25日 掲載