論文要旨 事業運営に役立つ仕事経験としての「管理者」経験の特徴─製造業A社の事例

佐藤 佑樹(一橋大学大学院商学研究科特任講師)

本稿は、事業部長や関係会社社長などの組織体の運営や事業のマネジメントに関する全責任を担う管理者(事業経営者)たちが事業運営にとって役に立っている経験として認識している管理者としてのとりまとめ業務に関連する経験(以下「管理者」経験とする)の特徴を探索的に明らかすることを目的としている。

分析を通じて、組織体を運営する上で役に立っている「管理者」経験は、時期的には40歳代と50歳代前半に集中しており、40歳代の前半は主に、課長クラスであるのに対して、40歳代後半と50歳代前半は部長クラスの「管理者」経験であることが分かった。

また、事業経営者の語りを通じて、課長クラスの「管理者」経験を大きく2つのタイプに分類することが可能であり、それぞれのタイプごとに共通する特徴が存在することが明らかになった。1つ目のタイプの共通特徴は、通常の課長クラスでは経験することができないような自由裁量の高さが含まれていた点である。2つ目のタイプの特徴は、通常の課長クラスと比べた場合に管理する部下の数が相対的に多い組織を任され、管理した点である。

同様に、部長クラスでの「管理者」経験も大きく2つのタイプに分類することが可能であり、それぞれのタイプごとに共通する特徴が存在することが明らかになった。1つ目のタイプの共通特徴は、部長クラスでありながら事業部の運営(事業部長の職務)に近い内容の経験をできた点である。2つ目のタイプの特徴は、部長クラスでの「管理者」経験の中で事業部レベルの戦略の立案や策定といった事業運営において中核的なタスクに携わった点である。

2012年特別号(No.619) 自由論題セッション●Cグループ

2012年1月25日 掲載