論文要旨 組織変動下における営業支援職のキャリア意識
─A社の事例研究

臼井 美奈子(法政大学大学院経営学研究科修士課程修了)

本報告は多国籍企業であるA社営業支援スタッフが国内外への業務移管が加速する中で、非自発的キャリア移行によってもたらされた組織変化の経験、組織の境界線がゆらぎつつある環境での変化を「変化への認識」、「会社と社員の関係」、「内的意識」更に「キャリア意識」といった仮定の枠組みを元に、彼らがどのようにとらえ、また「キャリア支援」を望んでいるかという観点からインタビューを通して考察を行った。

検証の結果、環境変化による意識の変化、キャリア意識の受け止め方と職場環境の影響、求めるキャリア支援の事実が明らかとなった。そこでは組織変化のスピードの加速、業務量の増加による精神的負荷が高い環境下ではあるものの、変化に対しての抵抗感を持つ者は少なく、自己の変化も必要という自覚を持っていることが実証された。また取り巻く環境変化による経験から将来について考える機会が多くなってきているが、個人では解決できないことも多く、スタッフは今後のキャリアを考えていく上で何らかの支援を求めており、企業におけるキャリア支援の重要性の事実も明らかとなった。

自ら望んだ変化ではなく、置かれた環境下における変化をかいくぐった経験ではあったが、彼らの意識及び考えに変化をもたらせたと言える意見を数多く得ることができた。また境界線がゆらぐ組織の経験は誰にでも おきることではなく、貴重な体験を通しての報告結果を得ることができたと考える。

2012年特別号(No.619) 自由論題セッション●Cグループ

2012年1月25日 掲載