論文要旨 企業内人材育成におけるOff-JTの有効性と課題
―Off-JTの有効性を規定する要因とは

佐藤 雄一郎(法政大学大学院政策創造研究科研究生)

本論文では、従業員のキャリア形成に、Off-JTを中心とした企業における人材育成施策や自らの能力開発行動が有効なのかどうかを、特に男女差、雇用形態差を意識しつつ考察した。調査方法としては、現在もしくは過去何らかの形で雇用者として就業経験のある2896名に対してアンケート調査を実施した。

結果として、(1)男性正社員に関しては、キャリア形成において、自身の自己啓発や教育訓練を通じた積極的な能力開発行動が有効であった。(2)特に、中長期的な視点での人材育成や学習行動がキャリア形成に有効であり、その要因として学校教育を通じた中長期的な視点での育成が影響を与えていた。具体的には、体力・徳育・基礎スキルなど中長期的視点での学びが、社会人になってからの自身の能力開発行動に影響を与え、中長期的視点でのOff-JTを中心に直接・間接的にキャリア状況の変化に影響を及ぼしていた。(3)ただし、男女差が明確に存在した。女性に関しては、正社員・非正社員を問わず、学校教育を通じた学びや自身の教育訓練の受講行動などがOJTやOff-JTの有用度を高めていたが、それがキャリア形成には影響していなかった。(4)女性非正社員に関しては、女性正社員と比較して、キャリア状況の変化にOff-JTが全く影響していなかった。

2012年特別号(No.619) 自由論題セッション●Aグループ

2012年1月25日 掲載