論文要旨 大学教育と初期キャリアの関連性
─全国大学4年次と卒業後2年目の継続調査

梅崎 修(法政大学キャリアデザイン学部准教授)

田澤 実(法政大学キャリアデザイン学部助教)

本稿では、大学4年次と卒業後の2時点の調査を行い、大学難易度や大学教育が就職活動や初期キャリアに与える影響を検証し、さらに大学生が大学教育をどのように評価しているかを検討した。分析よって明らかになったのは、次の4点である。

(1)非難関大学では、教育が内定獲得と満足度に正の影響を与えていた。その影響は教育の直接的な効果だけでなく、就職活動過程を媒介した効果もあった。

(2)労働条件に直結する就職活動結果に対しては難関大学であることだけが正の影響を与えていた。その一方で、非難関大学では限定的であれ、就職活動結果への教育効果が確認できた。

(3)難関大学は能動的学びであるのに対して、非難関大学は受動的学びであると解釈できる。

(4)大学別に教育評価を比較すると、難関大学の大学生の方がほとんどの能力項目で教育評価が高かったが、その一方で非難関大学では、成績が高くなるほど教育評価も高まることが確認できた。非難関大学では、教育評価を高める教育内容であると解釈できる。

以上のような教育効果と教育評価に対する分析結果を踏まえると、1つの解釈として評価と教育内容が相互に影響を与えている可能性が指摘できる。非難関大学における教育内容と教育評価の関連性は、今後の研究課題である。

2012年特別号(No.619) 自由論題セッション●Aグループ

2012年1月25日 掲載