論文要旨 非正規労働者の声を活かす─組織化の事例から

後藤 嘉代(労働調査協議会調査研究員)

非正規労働者が増加を続けるなかで、非正規労働者の組織化及び処遇改善の取り組みは徐々にではあるが進展している。

本稿では、「非正規労働者の組織化」を取り上げ、聞き取り調査の結果をもとに非正規労働者を組織化し、処遇改善に取り組む先進的な単位労働組合の事例から非正規労働者の組織化にかかわる取り組みの現状を具体的に紹介する。

単組の事例からは、非正規組織化に至る背景として、非正規労働者の増加による組合組織の存続への危機感や非正規労働者の仕事に対する処遇の低さから生じるモチベーションの低下や定着の問題、正社員の労働負荷の高まりや職場コミュニケーションの難しさなどに加え、企業経営の存続や行政改革など正社員を含めた職場環境の変化に対応せざるを得なかった状況がうかがえる。実際の組織化は、単組によりその手法は様々ではあるものの、共通して、組合役員による粘り強い働きかけや組合員が組合に加入したことを体感できる工夫が重要であることが明らかとなった。また、組織化後の処遇改善について、各単組では非正規組合員の声を吸い上げ、要求に反映させる努力が行われているが、処遇改善の第一段階は賃金よりもむしろ福利厚生面での正社員との均衡におかれているといえる。

今後、労働組合がさらに多くの非正規労働者を組織化し、処遇改善に取り組むためには、非正規組合員を組合活動の担い手とし、その声を反映させる仕組みづくりとともに、均等・均衡処遇の実現に向けた取り組みが求められる。

2011年特別号(No.607) 会議テーマ●非正規雇用をめぐる政策課題/パネルディスカッション

2011年1月25日 掲載