論文要旨 非正社員の企業内訓練についての分析

原 ひろみ(JILPT副主任研究員)

本稿では、労働者マイクロデータを用いて、非正社員の企業内訓練の受講を規定する要因を明らかにしたうえで、企業内訓練の効果の有無を計量的に検証する。

分析の結果、非正社員のうちフルタイムで働く人のほうがOJTとOff-JTともに受講密度が高く、期待勤続期間が長い人が現場で人から教わるという経験が多くなることが示される。さらに、勤務先での過去の訓練受講は、現在の教育訓練の受講機会を高めることも示される。さらに、企業内訓練を受講することで、仕事能力が高まることが示される。また企業内訓練の受講と生産性の間には、統計的に有意に相関関係があることを示唆する結果が得られる。しかしながら、訓練受講の賃金引き上げ効果は確認されない。また、勤務先での教育訓練の受講は、正社員への転換確率を統計的に有意に高めることが示される。

分析結果に基づいて、非正社員の人的資本投資を促すための対策として、現状ではパートタイムで働く人への支援が提案される。そして、将来的には、非正社員のままでも仕事が高度化されるように非正社員の活用の見直しが必要であろう。

2011年特別号(No.607) 会議テーマ●非正規雇用をめぐる政策課題/パネルディスカッション

2011年1月25日 掲載