論文要旨 営業支援職の組織内キャリア形成─コンサルティング会社A社の事例研究

長田 美絵(法政大学大学院経営学研究科研究生)

本論文では、経営コンサルティング会社(A社)を事例とし、支援職のアンケート調査、あるいは経営者や営業所長に対するヒアリング調査から多面的に現状を捉え、事務職の一類型としての営業支援職の仕事内容や意識、キャリア形成機会の実情や課題を考察した。

アンケート調査の結果、将来のキャリア希望で職種転換を望む者はなく、同じ営業支援職での職域の拡大を望む声が多かった。また、現状の職場環境・職務充実には概ね肯定的である一方、将来のキャリアパスや必要なスキル・知識が明確ではないとしていた。職務分析からは、他律的な手配業務が中心であり、暫時職場固有スキルを獲得する機会がほとんどないことが確認された。

今後に関して、経営者は制度的な支援によるキャリア形成には慎重であり、職場上司主体での業務再設計・職域拡大に期待を寄せるが、上司側は労務面の配慮や多忙さから難色を示し思うように促進されないことが予測された。また、職域拡大ケースの分析では、前職を含めた職業キャリアを認めて広範な業務を任せる営業所長の存在が一つの要因であることが確認される一方、職域拡大の対象業務が営業職の学習機会である場合もあり、職域拡大の結果として職種間で葛藤が生じるうることがうかがえた。

今後組織内キャリア形成を検討するにあたっては、営業支援職本人たちの意向やスキル、業務の難易度だけではなく、他職種のスキル形成過程やキャリア形成をも念頭に職域拡大を検討することが肝要であると結論づけた。

2011年特別号(No.607) 会議テーマ●非正規雇用をめぐる政策課題/自由論題セッション:Cグループ

2011年1月25日 掲載