論文要旨 技術部門における仕事管理─戦略的人的資源管理の視点を踏まえて

田中 秀樹(同志社大学大学院総合政策科学研究科博士後期課程)

本報告の目的は、戦略的人的資源管理(Strategic Human Resource Management, SHRM)の議論において注目されている、戦略に対応した人的資源管理(Human Resource Management, HRM)とはどのようなものなのかを明らかにすることである。SHRMの議論は盛んになっているが、戦略・HRM・業績の間の連関性はブラックボックスで、その内実は明らかにされていない。そこで、本報告では、仕事管理におけるPDCAサイクルの分析視点を援用して、戦略からブレイク・ダウンされた目標の連鎖を通して、戦略に対応したHRM、すなわちSHRM実践の解明への有用性に着目した。

仕事管理とは、労働力の効率的利用による生産性・業績向上に向けた管理であり、戦略に基づいて策定された目標が各部門・各階層に伝えられ、それを基にPDCAが回される仕組みである。この視点は、戦略に対応した企業行動の解明、特に目標連鎖及びその連鎖に伴うHRMの解明につながる。

そこで、本報告では、電気機器メーカーA社の開発管理部門・設計部署の仕事管理及びHRM事例を取り上げ、戦略からブレイク・ダウンされた目標の連鎖がどのように行われているのかを分析した。コスト削減戦略が部門目標・個人目標に落とし込まれ、その目標を起点に目標管理制度(Management by Object, MBO)が運用されており、HRMの評価・育成とつながっていることが確認できた。これらの事例分析結果を踏まえて、SHRM実践分析に対して仕事管理研究の分析視点が有用性を持つ可能性を示唆した。

2011年特別号(No.607) 会議テーマ●非正規雇用をめぐる政策課題/自由論題セッション:Cグループ

2011年1月25日 掲載