論文要旨 日本における仕事満足度の決定要因およびその雇用形態間の差異

馬 欣欣(慶應義塾大学先導研究センター研究員)

本研究では、2009年に慶應義塾大学が実施した『慶應義塾家計パネル調査』(KHPS2009)および『慶應義塾仕事と生活の家計パネル調査』(JHPS2009)の個票データを用い、サンプルの非ランダム性と同時決定などの問題を考慮した上で、日本の雇用者における仕事満足度の決定要因およびその雇用形態間の差異に関する実証分析を行った。

計量分析の結果から得られた主な結論は、以下の通りである。第一に、全体的に労働時間が長くなるほど、雇用者の仕事満足度が低くなる傾向にあり、また長時間労働が仕事満足度に与えるマイナスの影響は、非正規雇用者の方が正規雇用者より大きい。第二に、正規雇用者、非正規雇用者において、いずれも賃金所得が仕事満足度の変化に与える影響が顕著ではない。第三に、企業制度が仕事満足度に影響を与える。例えば、短時間勤務制度が実施された企業で勤める場合、正規雇用者、非正規雇用者とも、仕事満足度が高くなる。一方、裁量労働制が導入された企業で勤める場合、正規雇用者、非正規雇用者とも、仕事満足度が低くなる傾向にある。第四に、職場要因が仕事満足度に有意な影響を与える。例えば、正規雇用者、非正規雇用者において、いずれも上司および同僚との関係が変わらなかった場合に比べ、上司および同僚との関係が改善した場合、仕事満足度が高くなる。

一方、上司および同僚との関係が悪化した場合、仕事満足度が低くなる。

分析結果により、仕事満足度の決定要因における雇用形態間の差異が存在することが明らかになった。日本の雇用者の仕事満足度を高めるため、正規雇用者、非正規雇用者に対して異なる労働政策を検討すべきであることが示された。

2011年特別号(No.607) 会議テーマ●非正規雇用をめぐる政策課題/自由論題セッション:Cグループ

2011年1月25日 掲載