論文要旨 企業組織再編における労働関係の移転
─ドイツ民法典613a条および組織再編法における労働関係移転の検討

成田 史子(東京大学大学院法学政治学研究科博士課程)

事業譲渡や会社分割等の企業組織再編は、労働者の労働契約や労働条件等に大きな影響を与えかねないものである。本稿の目的は、このような企業組織再編時の労働関係の移転ルールについて、ドイツ法のおける仕組みを考察するものである。ドイツでは、事業譲渡の際は、民法典613a条により労働関係の自動移転ルールが定められている。合併や分割等を規制する組織再編法(Umwandlungsgezetz)においても、労働関係の自動移転について規制する民法典613a条の一部の適用を前提とする立法がなされている(組織再編法324条)。すなわち、企業組織再編時の労働関係移転については、同一の移転ルールに服させているのである。

一方、日本では、企業組織再編の際の労働関係移転について、事業譲渡時には、特定(個別)承継により処理され、会社分割時には、労働契約承継法により労働契約の移転ルールが規制されている。すなわち、日本では労働契約の移転は異なるルールに服させている。

ドイツにおいて、このような労働関係の移転ルールが形成された歴史的経緯や労働関係移転の実際の効果等を検討する。

2011年特別号(No.607) 会議テーマ●非正規雇用をめぐる政策課題/自由論題セッション:Bグループ

2011年1月25日 掲載