論文要旨 企業のワーク・ライフ・バランス施策は「新たな報酬」か?─ワーク・ライフ・バランス施策と企業への帰属意識の関係からの考察

高村 静(内閣府男女共同参画分析官)

仕事領域と、仕事以外の活動領域における個人の果たすべき役割を共存させようと努める個人を、積極的に認め支援しようとする、企業によるワーク・ライフ・バランス施策の「報酬」としての効果について検討する。ワーク・ライフ・バランス施策に取り組むことによる従業員の意識や意欲への影響については、「組織コミットメント」を直接的な成果変数とし、最終的な組織成果を生産性の向上として推定する。「組織コミットメント」に対するワーク・ライフ・バランス施策の影響度合を推定する際、「外的報酬」である給与水準、「内的報酬」とされる「仕事のやりがい」の効果と比較しその性格づけについて検討したところ、多様な価値観を受容しお互いに助けあう企業風土(土台部分)、効率的な業務の運営に心がける仕事管理や環境整備など(1階部分)、さらに両立支援関連制度の導入や制度を利用できる職場づくり(2階部分)と、あたかも2階建て家屋を構築するよう体系的で一貫した人的資源管理施策(ワーク・ライフ・バランス施策の「3段階構築仮説」、佐藤(2008))として取り組めば、従業員を意識づける効果において仕事のやりがいと近い効果をもつ「報酬」といえるであろうことが推定された。

2011年特別号(No.607) 会議テーマ●非正規雇用をめぐる政策課題/自由論題セッション:Aグループ

2011年1月25日 掲載