資料シリーズ No.152
雇用保険業務統計分析Ⅱ
概要
研究の目的
雇用関連の統計指標としての雇用保険データの活用拡大の可能性を探るため、適用・給付等のさまざまなデータについて、他の経済統計との関係も含めて動きを分析する。
研究の方法
雇用保険事業年報その他各種統計報告書、政府統計の各Webサイト等から統計を入手し、時系列変化をみる。総務省「労働力調査」による雇用、失業統計と被保険者数や受給者数の動きを比較するなど、前回「雇用保険業務統計分析」(2013年)からさらに踏み込んだ。産業別、都道府県別にもみた。また、月次データのあるのが雇用保険データの特徴の一つであり、今回は月次変化についても、系列相互の、或いは他の雇用失業指標、景気変動を表す指標との先行、遅行の状況等をみた。
主な事実発見
報告書は年度統計と月次統計の2章からなり、年度統計は中長期的な動きをみる観点から、月次統計は月々の短期的な動きをみる観点から、それぞれまとめてある。被保険者数や各種失業等給付の動きをほぼ網羅的にみた。
以下、月次統計の章から、特徴的な結果をいくつか選び紹介する。
- 被保険者数と労働力調査による雇用者数
図表1 前年同月比
被保険者数の動きを総務省「労働力調査」による雇用者数の動きと比べると、
○雇用者数よりも総じて遅行
○雇用者数に比べてなめらかに変動
○増加トレンドがある(増加トレンドについては第1章で詳述)
- 被保険者資格喪失者数(一般被保険者)――喪失理由により動きが逆
図表2 事業主都合 資格喪失者数 季節調整値とTC要素
事業主都合
不況期に増加(1997~98年、2001年、2008年後半)、
回復・拡大期に減少(1999~2000年、2002年~2006年)
図表3 事業主都合以外 資格喪失者数 季節調整値とTC要素
事業主都合以外
景気回復・拡大期に増加、不況期に減少
- 事業主都合の資格喪失は、景気動向指数と比較すると、逆サイクルで、やや先行して動く。
図表4
内閣府
「景気動向指数」前年同月比と景気動向指数の水準との相関係数 先行指数 -0.647996 一致指数 -0.543315 遅行指数 0.013631 - 事業主都合の資格喪失者数に1月程度遅れて、特定受給資格の初回受給者数が動く。
図表5
前年同月比の相関係数 当月 0.9011 1月前 0.9543 2月前 0.8982 3月前 0.7747 - 事業主都合以外の資格喪失は、求人に連動し、遅れて動く。
図表6
政策的インプリケーション
被保険者数や基本手当受給者数の統計は、動きに景気との相関が認められ、経済指標として活用が期待できる。
政策への貢献
被保険者や失業等給付についてほぼ網羅的にみており、それぞれの特徴をできる限り露わにしているので、政策企画立案や日常業務の基礎資料としての活用はもとより、経済の動きをみるうえで雇用保険データを使う際の参考資料として活用いただけるものと考える。
本文
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研究の区分
研究期間
平成26年度
執筆者
- 石原 典明
- 調査・解析部情報統計担当部長
関連の調査研究
- 資料シリーズNo.119『雇用保険業務統計分析』(2013年)
- 労働政策レポートNo.7『労働市場のセーフティネット』(2010年)
(制度の変遷が第1部に記述されている。)
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