資料シリーズ No.149
建設労働者に関する分析
―建設事業主団体等へのヒアリング調査を中心に―
概要
研究の目的
建設業における全国的な人材不足が指摘されるなか、東京オリンピック開催などに向けた建設需要の拡大が見込まれている。こうした実情を踏まえ、建設現場の人手不足の状況、需給見通し、人材確保・育成策などについて、建設事業主団体、専門工事業団体、労働組合、認定職業訓練校等にヒアリング調査を実施し、課題を抽出する。
研究の方法
ヒアリング調査の実施(10箇所)
建設業事業主団体(1団体)、専門工事業団体(管工事、鳶、型枠、鉄筋の4団体)、総合建設業者(1社)、職業訓練機関(公共職業訓練校1校、認定職業訓練校2校)、産業別労働組合(1組織)
主な事実発見
- 1990年初頭のバブル崩壊後、建設需要・投資は減少の一途をたどり、リーマン・ショックの影響で、廃業や離職が一段と加速した。
- 建設投資額はピーク時の約半分まで下落し、受注競争が激化した結果、利益率が下がり、建設労働者のさらなる減少を招いた。
- 東日本大震災後の復興需要のほか、安倍政権以降の公共投資の増大、消費税増税前の駆け込み需要を見込んだ民間部門の建設ラッシュなどで、人手不足が顕在化した。なかでも足元では型枠工と鉄筋工の人手不足が顕著となっている。
- 人手不足が進行しているにもかかわらず、東京五輪後の需要見通しが立たず、再び建設市場が縮小するのではないかとの懸念から、設備投資や人材確保に踏み切れない。
- 建設労働者の4割弱が55歳以上で60歳以上の高齢層も多く、今後こうした層の大量退職が始まる。
政策的インプリケーション
処遇改善
- 3Kのイメージが強いことに加え、全産業平均からみても賃金の低さ、労働時間の長さが顕著なだけに、官民が連携し、業界あげての処遇改善を進める必要がある。
- 資格と処遇がリンクしたキャリアパスの明示などキャリア展望を示すことが人材確保・育成につながる。
若者の入職促進・教育訓練
- 新規入職者向けの集合訓練の場を設けることで、職場定着にもつながる事例が見られた。
- 工業高校での出前授業なども人手不足感の強い型枠や鉄筋などの専門工事業への入職促進に貢献している事例がみられる。
災害対応・インフラ維持管理
- 建設労働者は、老朽化の進むインフラの維持管理・補修、さらに将来起こりうる大規模災害後の復旧・復興要員として欠くべからざる人材となることを考えると、中長期を展望した人材の育成・確保策が求められる。
政策への貢献
厚生労働省職業安定局建設・港湾対策室の予算事業に反映。
本文
本文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。
- 表紙・まえがき・執筆者・目次(PDF:545KB)
- 第1章統計資料からみる建設労働の推移(PDF:980KB)
- 第2章統計分析(賃金と雇用者数の推移)(PDF:703KB)
- 第3章建設業界団体等へのヒアリング調査結果―建設事業主団体、専門工事業団体、労働組合、認定職業訓練校など10事例―(PDF:975KB)
研究の区分
緊急調査
研究期間
平成25年12月~平成26年7月
執筆者
- 荻野 登
- 調査・解析部長
- 田中 伸彦
- 前研究調整部次長
- 野口 智明
- 研究調整部次長
- 遠藤 彰
- 調査・解析部主任調査員補佐