資料シリーズ No.94
第11回日韓ワークショップ報告書
長時間労働と労働時間の短縮施策:日韓比較

平成23年9月16日

概要

研究の目的と方法

労働政策研究・研修機構では毎年、韓国労働研究院(KLI)と共催で、日韓に共通する労働政策課題を取り扱う「日韓ワークショップ」を開催している。平成23年度は、「長時間労働と労働時間の短縮施策」をテーマとして、5月27日に韓国(ソウル)で開催した。

日本・韓国とも、年間総実労働時間は徐々に減少しているものの、欧州の各国に比べると依然として明らかに長時間労働となっている。今回のワークショップでは、両研究機関の研究員が労働時間に関する日韓の現状と課題について、これまでの研究成果に基づいて報告し、双方の国の労働時間の実態と、取り巻く状況に対して理解を深めるとともに、課題解決に向けて意見交換を行った。本書はそのワークショップにおける報告論文を収録したものである。

主な事実発見

  • 韓国では長時間労働問題が深刻な問題となっていたが、法定労働時間の短縮や休日・休暇制度の拡充などにより、総実労働時間は持続的に下落している。しかしながら、国際的にみると依然として比較的長い水準にあり、また産業・職種・事業規模間などでの偏りも大きい。交替制勤務という特殊な勤務体制の存在も労働時間の長時間化に影響を及ぼしている。長時間労働の是正に向け、更なる有効な施策が求められている。
  • 日本の労働時間の推移については、長期的に減少傾向にあるが、その特徴を分析すると、特に週休制の拡充期や、労働基準法の改正期に大きく減少している。また、近年の非正規雇用者の割合の増大も、労働時間減少の要因の一つとして指摘できる。今後の長時間労働の是正施策については、特に労働時間の長い労働者層に的を当て、その原因類型に応じて対策を講じることが重要である。
  • 日本における労働時間法制の変遷・経緯についても詳解した。法定労働時間短縮政策は1990年頃、年間2,000時間を超える総実労働時間に対する国際的外圧を契機に推し進められた。労働時間法制における規制の軸は、当初の生命維持の視点から、健康確保などへと質的に変容してきている。また、労働時間規制をめぐる今後の課題についても示した。
  • 日韓とも、長時間労働の背景にある文化的・制度的課題について更に分析を進め、労働時間短縮に向けた有効な施策を模索していくことの重要性を改めて確認した。

図表1 韓国の自動車部品会社の年間労働時間分布

韓国の自動車部品会社の年間労働時間分布/資料シリーズNo.94(JILPT)

注:2009年勤労者の年間平均労働時間は2,074時間(OECD Employment Outlook 2010)

資料:全国金属労働組合(2008)、金属労組自動車部品会社実態状況

図表2 労働時間を左右する要因 (日本)

労働時間を左右する要因 (日本)/資料シリーズNo.94(JILPT)

※「WLB」とは、ワークライフバランスのことである。

政策的含意

日韓両国における長時間労働の実態とその背景、労働時間法制の変遷及び、労働時間短縮に向けた今後の課題が明らかになった。

政策への貢献

長時間労働問題は、日韓両国にとって、依然として重要な政策課題の一つとなっている。同テーマを取り上げて日韓の比較研究を行い、議論をしたことで、労働時間に関する具体的政策課題の提示に貢献した。

本文

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研究期間

平成23年度

お問合せ先

内容について
調査部 国際研究交流課 電話:03-5903-6274
(10時~12時および13時~17時。土日祝日と年末年始を除く。)
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