調査シリーズNo.230
家事使用人の実態把握のためのアンケート調査
概要
研究の目的
家事使用人の労働条件等について実態を把握し、必要な取組について検討するため、家政婦取扱事業所(以下、「家政婦(夫)紹介所」という)を通じて、家事使用人に対するアンケート調査を実施した。
本調査は、厚生労働省労働基準局の要請に基づく要請研究である。
研究の方法
家事使用人に対する個人アンケート調査。調査方法は、全国の家政婦(夫)紹介所を経由して、調査対象である家事使用人(家政婦(夫))に調査票を配付し、回収は直接返送としている。厚生労働省「令和2年度職業紹介事業報告」で報告されている全国の家政婦(夫)紹介所の全数にあたる541か所を選定。調査対象は、家政婦(夫)職業紹介所(541か所)に登録し、個人家庭と契約し、個人家庭で家事業務を行ったことがある家事使用人(家政婦(夫))9,220人。調査期間は、2023年1月31日~3月15日。有効回収数:1,997人(有効回収率:21.7%)
主な事実発見
- 家政婦(夫)の属性として、性別は、女性が98.8%、男性が0.6%となっている。年齢は、「70代」が50.1%と最も高く半数を占め、「60代」が27.4%、「50代」が9.6%、「80代以上」が7.3%、「40代」が3.4%、「30代以下」が1.0%となっている(平均68.9歳)。
- 現在、登録している職業紹介所の数は、「1か所」が87.6%と9割弱を占め、最も割合が高く、「2か所」が9.3%、「3か所以上」が2.3%となっている。一方、家政婦(夫)として働いている就労先数は、「1件」が47.5%と半数弱を占め最も割合が高く、「2件」が26.7%、「3件以上」が22.0%となっている。
- 「通勤・泊まり込みの状況」では、「通勤」が83.8%と大半を占め、一方で「泊まり込み」が8.9%となっている。また、「両方(通勤・泊まり込みが同程度の頻度)」も6.0%となっている。「泊まり込み+両方・計」(「泊まり込み」と「両方(通勤・泊まり込みが同程度の頻度)」の合計)の割合は、14.9%となっている。
- 家政婦(夫)の職業を選んだ理由(複数回答)は、「年齢問わず働けるから」(51.9%)、「収入を得るため」(50.1%)が5割程度と高く、「自分の都合に合わせて好きな時間に働けるから」が39.0%、「人の役に立てるから」が37.8%、「主婦(夫)をしていたなど自分の経験を活かせるから」が36.5%などとなっている。
- 訪問介護サービス事業者や家事代行サービス業者等に雇用される働き方ではなく、個人家庭と契約する家政婦(夫)として働いている理由(複数回答)は、「勤務時間の長さなどの制限がないから」が33.6%と最も高く、次いで、「知人から紹介されたから」が22.2%、「賃金が高いから」が20.2%などとなっており、「特に理由はない」も18.9%ある(図表1)。
- 普段行っている業務(複数回答)としては、「掃除関係の業務」が84.6%と最も高く、「食品・料理関係の業務」が66.9%、「衣類・洗濯関係の業務」が65.2%、「高齢者介護・認知症介護」が46.4%、「住生活関係の業務」が41.1%などとなっている。最も従事する時間が長い業務としては、「掃除関係の業務」(38.1%)、「高齢者介護・認知症介護」(24.0%)、「食品・料理関係の業務」(22.1%)が上位となっている。
- 決められている契約内容(複数回答)としては、「勤務時間」(86.4%)、「業務内容」(81.4%)、「就労場所」(74.3%)が8割前後で上位となっており、次いで、「賃金額等の賃金に関する内容」(68.2%)、「労働契約期間」(56.8%)が6割前後、「求人者の家庭に損害を与えた場合等の補償内容」(29.2%)、「休憩時間」(26.6%)、「休日・休暇」(25.2%)が2割程度などとなっている。
- 1日当たりの平均勤務時間は、「2時間以上5時間未満」が43.0%と最も割合が高く、「5時間以上10時間未満」が23.0%、「2時間未満」が14.4%となっている。「5時間未満・計」(「2時間未満」「2時間以上5時間未満」の合計)は57.4%であり、6割弱を占めている。比較的長時間にあたる「10時間以上・計」(「10時間以上15時間未満」「15時間以上20時間未満」「20時間以上」の合計)の割合は13.3%である。
- 1週間の平均勤務時間は、「10時間未満」が35.5%と最も割合が高く、次いで、「10時間以上20時間未満」が26.7%、「20時間以上30時間未満」が12.8%と、比較的短い勤務時間の層が多い。一方で、「40時間以上60時間未満」が6.4%、「60時間以上」が2.9%となっており、長い勤務時間の層もいる。
- 1か月の平均就労日数は、「10日以上15日未満」が24.8%と最も割合が高く、次いで、「5日未満」(22.4%)、「5日以上10日未満」(21.5%)、「15日以上20日未満」(15.4%)が続く。家政婦(夫)としての1か月当たりの報酬は、「5万円未満」が34.4%と最も割合が高く、次いで、「5万円以上10万円未満」が32.2%、「10万円以上15万円未満」が15.6%、「15万円以上20万円未満」が8.4%、「20万円以上」が6.2%となっている。
- 業務中に病気やけがなどをした経験がある割合は15.2%となっている。病気やけがなどの内容(複数回答)については、「骨折・ヒビ」(27.1%)、「切傷」(26.4%)、「腰痛」(26.4%)、「打撲」(24.4%)が2割台で上位となっている。
- 労災保険の特別加入の状況は、「はい(加入している)」が34.3%、「いいえ(加入していない)」が43.1%、「分からない」が13.2%となっている。「いいえ(加入していない)」と回答した者の労災保険に特別加入していない理由(複数回答)は「民間保険に入っているから」が57.0%と最も高く、「制度を知らなかったから」が19.3%、「保険料が高いから」が8.0%などとなっている。
- 民間保険の加入状況(複数回答)は、「業務中の家庭への対人・対物損害補償(ケア・ワーカー損害責任補償)」が60.1%と最も高く、「業務中の自身のけが等の手術・入院費等の補償(傷害補償制度)」が30.8%、「自身のけが等の医療費の補償(共済(医療費)助成制度)」が25.6%などとなっている一方で、「(選択肢にある5つ全ての)保険に加入していない」は11.7%となっている。
- 過去5年間で、求人者の家庭に雇われて家政婦(夫)として働く中で生じたトラブルや困ったことについては、「特にない」が66.4%となっている。「何らかのトラブル等があったとする割合」は、20.3%だった。具体的なトラブル等としては、「契約の範囲外の業務を命じられた」(5.8%)、「パワハラを受けた」(5.5%)、「業務で求められる水準が高すぎる」(4.9%)、「家庭からいきなり契約を切られた」(4.5%)、「セクハラを受けた」(3.0%)、「労働環境が悪い(トイレの利用を制限される、夜勤で寝る場所がない等)」(2.7%)などが続く。
- 個人家庭に雇用される働き方の満足度は、「満足している」が49.2%、「やや満足している」が36.2%、「やや不満」が6.5%、「不満」が2.0%となっている。「満足・計」(「満足している」「やや満足している」の合計)は、85.4%である(図表2)。
政策への貢献
家事使用人の労働条件等について実態を把握し、厚生労働省に基礎的データを提供した。労働条件分科会で活用。
本文
研究の区分
情報収集
研究期間
令和4~5年度
執筆担当者
- 奥田 栄二
- 労働政策研究・研修機構 調査部次長
お問合せ先
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