調査シリーズNo.224
多様化する労働契約の在り方に関する調査
(企業調査、労働者WEB調査)

2022年3月31日

概要

研究の目的

労働契約法の一部を改正する法律(平成24年法律第56号)附則第3項において、同法施行後8年を経過した場合において、改正労働契約法第18条の規定に基づく無期転換ルールについて、「その施行の状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるもの」とされている。また、勤務地限定正社員や職務限定正社員等の「多様な正社員」は、無期転換ルールによって無期雇用となった社員の重要な受け皿の1つとして期待されるところ、規制改革実施計画(令和元年6月閣議決定)において、多様な正社員の雇用ルールの明確化について検討することとされている。このため、多様化する労働契約の在り方に関する実態などを的確に把握するため企業調査と労働者WEB調査を行った。

本調査は、厚生労働省労働基準局の要請に基づく要請研究である。

研究の方法

【企業調査】

調査方法:
郵送による調査票の配布・回収。
調査期間:
2021年1月15日~3月1日。
調査対象:
従業員規模30人以上の全国の民間企業等2万社。企業調査では、企業(法人)の抽出に当たって、「平成28年経済センサス活動調査」の「産業」「規模」の分布に合わせて、民間信用調査機関の企業データベースから層化無作為抽出した企業に調査票を配布。
有効回収数:
5,729件(有効回収率:28.6%)。

【労働者WEB調査】

調査方法:
調査会社の登録モニターを対象としたインターネット調査。
調査期間:
2021年1月14日~1月28日。
調査対象:
20歳以上の正社員、契約社員・嘱託、パート・アルバイト、派遣社員。労働者の回収にあたって、回収目標を2万件として「就業構造基本調査(2017年)」の「性」「年齢」「就業形態」の分布に合わせた層化割付回収とした。
有効回収数(本調査):
2万件。

主な事実発見

  • 企業調査では、有期契約労働者から転換し期間の定めのない契約となった社員(以下、「無期転換社員」(労働契約法上の無期転換制度で転換した社員とともに、会社独自の無期転換制度で無期転換した社員も含む)について、「フルタイムの無期転換社員」が「いる」とする割合は、24.6%、「パートタイムの無期転換社員」が「いる」とする割合が23.3%となっている。また、無期転換社員がいる企業の割合(「フルタイムの無期転換社員」又は「パートタイムの無期転換社員」のいずれかがいると回答した企業)は、32.4%となっている。いわゆる正社員(「無限定正社員」)と比較して、勤務地、職務、労働時間等が限定されている「多様な正社員」の有無では、「勤務地限定正社員がいる」割合が9.6%、「職務限定正社員がいる」が9.8%、「勤務時間限定正社員がいる」が7.5%。「以上のいずれの社員区分もない」(多様な正社員がいない)企業の割合が76.3%。「多様な正社員がいる企業」(「勤務地限定正社員がいる」「職務限定正社員がいる」「勤務時間限定正社員がいる」のいずれかを回答した企業)の割合を集計すると、全体の18.3%となっている。
  • 企業調査において、無期転換社員が「いる」とする企業における、就業規則や個別の契約等での契約期間以外の労働条件に関わる「別段の定め」の活用状況では、「フルタイムの無期転換社員」で「活用している」割合は29.0%、「パートタイムの無期転換社員」で「活用している」割合は9.2%となっている。
  • 労働者調査において、転換時の変更事項についてみると、「無期転換社員」のなかで、「転換時に変更されたのは契約期間のみ」が72.2%、「転換時に契約期間以外の労働条件も変更された」が27.8%となっている。無期転換後の働き方(契約内容)の変化(複数回答)では、「働き方に変化はない」が68.3%と最も高い。具体的な変化の内容としては、「職種が変更になった」(10.1%)、「難しい仕事を任されたり、責任が重くなった」(9.9%)、「役職への登用があり得るようになった」(6.1%)、「事業所内の異動(配置転換)があり得るようになった」(5.5%)、「残業や休日出勤が増えた」(4.7%)などとなっている。無期転換後の賃金や労働条件(契約内容)の変化(複数回答)では、「賃金や労働条件に変化はない」が66.8%と最も高い。具体的な変化の内容としては、「基本的な賃金の水準がアップした」(12.6%)が最も高く、次いで、「賃金の支払形態が変わった(時給制→月給制等)」(9.4%)、「目標管理制度や人事評価制度が新たに適用されるようになった」(6.7%)、「勤続年数等に伴う定期的な昇給があり得るようになったり、昇給水準がアップした」(6.7%)などとなっている。
  • 企業調査において、限定内容別に企業が多様な正社員を導入した理由(複数回答)をみると、「勤務地限定正社員」では「正社員の定着を図るため」が最も高く、「職務限定正社員」では、「職務を限定することで、専門性や生産性の向上をより促すため」が最も高く、「勤務時間限定正社員」では、「育児・介護等と仕事との両立への対応のため」の割合が最も高くなっており、限定内容に応じた導入理由となっている。
  • 企業調査では、過去5年間において多様な正社員の労働条件の限定内容について、いずれも1割超の企業が変更していた。変更した労働条件の限定内容については、勤務地限定正社員は「勤務地の変更(転勤)」が最も高く、職務限定正社員は「他職務(職種)への配転」、勤務時間限定正社員は「所定の勤務時間の変更」の割合が最も高かった。多様な正社員の労働条件の限定内容を変更した理由(複数回答)は、いずれの限定区分においても、「労働者の希望」と回答した企業の割合が最も高く、そのほかでは、「事業所、部署の廃止」「人手不足」「事業再編」などがある。多様な正社員の労働条件の限定内容を変更した際の手続き(複数回答)としては、いずれの限定区分においても、個別の従業員の同意を得た企業の割合(「個別の従業員の同意を得た」は、「個別の従業員の同意を得て、個別の契約により変更した」「個別の従業員の同意を得て、就業規則等に則り変更した」のいずれかを選択した企業)が8割超となっている。
  • 労働者調査において、現在の会社で、過去5年間に労働条件(勤務地や職務(職種)、勤務時間など)の限定内容の変更については、多様な正社員で「会社都合の変更・計」(「会社の都合で変更した」「会社の都合で変更したことも、自分の都合で変更したこともある」の合計)は23.0%だった。変更した労働条件の限定内容(複数回答)は、いずれの限定区分においても、「所定の勤務時間の変更があった」が最も高く、次いで、「他の職務(職種)への配転による変更があった」「勤務地の変更があった」となっている。労働条件の限定内容の変更時の変更方法(複数回答)は、「就業規則で変更した」が26.2%、「個別契約で変更した」が19.5%などとなっている。一方、「会社側がどのような方法で労働条件を変更したかわからない」が31.7%あり、「特段の手続きを経ることなく変更した」も11.2%ある。
  • 企業調査において、企業における多様な正社員の採用・補充方法(複数回答)では、「中途・通年採用」の割合が最も高い。「有期契約労働者からの転換」や「無期転換社員からの転換」により多様な正社員を補充している企業の割合も約2割となっている(図表)。

    図表  企業における多様な正社員の採用・補充方法(MA、単位=%)【企業調査】

    図表画像

  • 労働者調査では、現在の就業形態になった経緯については、他の就業形態から転換した多様な正社員の割合は16.8%であった。転換して多様な正社員になった者の、転換前の就業形態については、「いわゆる正社員」の割合が最も高い。
  • 多様な正社員のいわゆる正社員への転換希望については、「希望する」割合が約3割、「希望しない」割合が約7割であった。いわゆる正社員への転換を希望する理由(複数回答)は、「賃金が上昇するから」の割合が最も高い。一方、「希望しない」理由(複数回答)は、「自分の都合のよい時間で働けなくなる」の割合が最も高くなっている。
  • 多様な正社員で、仕事がほぼ同じ正社員と比較した待遇について、「不満がある」(「非常に不満」(11.7%)、「やや不満」(34.9%)の合計)という割合は46.6%となっている。その不満の内容(複数回答)については、「不合理な賃金差がある」が36.0%と最も高く、次いで、「共有がしっかりとなされない情報が多い」(23.5%)、「労働時間と比較して、業務量が過大である」(18.9%)、「昇進に上限がある」(16.3%)、「不合理な昇進スピードの差がある」(14.5%)などが続く。
  • 企業調査において、過去5年間において多様な正社員等とトラブルがあった企業の割合は1.9%。トラブルの原因は、「会社から限定区分の変更(職務変更や勤務地変更等)を申し入れたが拒否された」の割合が28.3%と最も高く、次いで、「多様な正社員等から無限定正社員との待遇差に不満が出た」「会社の指示が就業規則や個別の契約に明記した限定内容に反していると拒否された」などが続く。一方、労働者調査において、過去5年間における現在の会社とトラブルがあった割合は6.3%であった。これを過去5年間の労働条件の限定内容変更の有無別にみると、「会社の都合で変更した」でトラブルが「あった」とする割合が17.1%と最も高くなっている。トラブルの原因は、「会社の指示が限定内容に反していたから」の割合が29.3%と最も高く、次いで、「限定区分の変更(職務(職種)変更や勤務地変更等)を受け入れた場合の補償や配慮が足りない」「限定区分の変更(職務(職種)変更や勤務地変更等)に納得がいかなかった」「正社員との待遇差に不満があった」などが続く。

政策的インプリケーション

企業における多様な正社員の採用・補充方法は、中途・通年採用が多いが、「有期契約労働者からの転換」や「無期転換社員からの転換」により多様な正社員を補充している企業もみられる。多様な正社員の労働条件の限定内容の手続きでは、個別の従業員の同意を得ている割合が高い。多様な正社員等での限定された労働条件の変更は、企業側、労働者側双方の申出であるが、限定内容に反することや限定区分の変更による配慮などでトラブルが生じるケース等が一部にみられる。

政策への貢献

厚生労働省の「多様化する労働契約のルールに関する検討会」に基礎的データの提供。

本文

研究の区分

情報収集

研究期間

令和2~3年度

調査担当者

郡司 正人
労働政策研究・研修機構 調査部長(当時)(現・リサーチフェロー)
奥田 栄二
労働政策研究・研修機構 調査部 主任調査員

入手方法等

入手方法

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