調査シリーズNo.213
次世代育成支援対策推進法の施行状況に関する調査

2021年7月30日

概要

研究の目的

次世代育成支援対策推進法(平成15年7月16日法律第120号)は、我が国における急速な少子化の進行並びに家庭及び地域を取り巻く環境の変化にかんがみ、次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、育成される環境を整備するため、国、地方公共団体、事業主、国民の責務を明らかにするとともに、行動計画策定指針並びに地方公共団体及び事業主の行動計画の策定など、次世代育成支援対策を推進するために必要な事項を定めている。

同法は10年間(平成17年度~平成26年度)の時限立法であったが、平成26年の法改正で、10年間(平成27年度~令和6年度)の延長となった。改正法の附則においては、施行後5年を目途として、施行状況を勘案しつつ必要な見直しを検討することとされている。

今回調査では、認定一般事業主(以下、「くるみん認定企業 」という)及び特例認定一般事業主(以下、「プラチナくるみん認定企業 」という)に対して、次世代育成支援に関する取り組み状況、一般事業主行動計画の策定状況・策定内容別の取り組み状況、策定による効果、「くるみん」及び「プラチナくるみん」認定取得状況、取得理由、認定マークの活用状況、取得効果、課題、要望などについて尋ねている。

なお、本調査は、厚生労働省雇用環境・均等局職業生活両立課からの要請調査である。

研究の方法

調査方法
郵送調査(実査期間:2020年9月1日~10月12日)
調査対象
くるみん認定企業及びプラチナくるみん認定企業(3,357社、1,762件回収)
調査項目
次世代育成支援に関する取り組み状況、一般事業主行動計画策定の効果と課題、くるみん、プラチナくるみん取得理由、取得効果、課題・要望等

主な事実発見

  1. 一般事業主行動計画の策定・推進状況

    回答企業(n=1,762)が仕事と生活の両立支援策に取り組んだきっかけ・理由(複数回答)は、「従業員のワーク・ライフ・バランスの確保が経営戦略としても重要」(66.5%)を挙げる割合がもっとも高く、次いで、「育児・介護休業法の法令順守のため」(65.4%)、「女性の結婚・出産後の就業継続をはかるため」(63.3%)、「次世代育成支援対策推進法で一般事業主行動計画を作る必要があるため」(58.1%)、「優秀な人材確保のため」(55.4%)の順となる。

    また、これまで取り組んできた両立支援制度・措置を複数回答で聞いたところ、「育児休業制度」(94.5%)、「育児のための短時間勤務制度」(91.0%)、「子どもの看護休暇制度」(89.4%)、「介護休業制度」(87.8%)、「年次有給休暇の取得の促進のための措置の実施」(85.1%)を挙げる企業が多い。

    これまで取り組んできた両立支援制度・措置について、一般事業主行動計画策定をきっかけに新設した制度・措置(複数回答)としては、「在宅勤務制度」(29.8%)、「結婚や育児を理由とする離職者の再雇用制度」(27.9%)、「子どもの学校行事への参加のための休暇制度など子育てに関する企業独自の休暇制度」(23.4%)を挙げる企業が多い。一方、拡充した制度・措置としては、「年次有給休暇の取得の促進のための措置の実施」(47.3%)、「育児休業制度」(42.8%)、「所定外労働の削減のための措置の実施」(42.5%)などの回答割合が高くなっている(図表1)。

    図表1 一般事業主行動計画の策定を契機に新設・拡充した制度・措置(MA 単位=%)

    図表1画像

    回答企業(n=1,762)の一般事業主行動計画の策定・推進の効果(複数回答)については、「年次有給休暇の取得率・取得日数が上昇・増加した」(37.7%)、「男性の育児休業取得率が上昇した」(34.9%)、「女性従業員の制度利用が進んだ」(34.5%)、「男性従業員の制度利用が進んだ」(34.2%)、「従業員の制度の認知度が向上」(30.2%)を挙げる企業の割合が3割程となった。

    行動計画の策定・推進の効果について、行動計画に盛り込んだ数値目標を分析軸に加えてみると、女性関連の数値目標としては、「女性の育児休業取得率または人数」を掲げた企業では、「女性の育児休業取得率が上昇した」とする割合が31.1%となっている。「女性の出産前後の就業継続率または人数」を数値目標とした企業では、「出産・育児を理由とした退職者が減少した」が56.9%と高く、「女性の育児休業取得率が上昇した」(47.1%)、「女性従業員の制度利用が進んだ」(43.1%)、「年次有給休暇取得率・日数が上昇・増加した」(43.1%)なども高くなっている(図表2)。

    図表2 行動計画の策定・推進効果(n=1,762 単位=%)

    図表2画像
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    男性関連の数値目標としては、「男性の育児休業取得率または人数」「男性の育児目的休暇取得率または人数」を掲げた企業では、「男性の育児休業取得率が上昇した」「男性従業員の制度利用が進んだ」とする割合が高くなっている。

    労働時間関連の数値目標としては、「時間外労働の削減率または削減時間数」を掲げた企業では、「時間外労働の削減が進んだ」とする割合が高く、「年次有給休暇の取得率または取得日数」を数値目標に掲げた企業では、「年次有給休暇取得率・日数が上昇・増加した」とする割合が高くなっている。

    一方、「数値目標は盛り込まない」企業では、「特段、効果はみられなかった」とする割合は数値目標がある場合に比べ、相対的に高くなっている。「数値目標は盛り込まない」場合、ほぼすべての項目で効果がもっとも低くなっている。

  2. 「くるみん」認定取得状況

    回答企業(n=1,762)の「くるみん」認定取得理由(複数回答)としては、「企業のイメージアップ」(79.9%)を挙げる割合がもっとも高く、次いで、「女性従業員の採用・確保」(66.0%)、「従業員の定着率の向上」(55.9%)、「取り組みに対する従業員の理解推進、全社員的な取組推進」(47.3%)、「女性従業員の制度の利用推進」(40.5%)の順となる。

    回答企業(n=1,762)の「くるみん」認定取得の効果(複数回答)については、「学生に対するイメージアップ」(51.5%)をあげる企業がもっとも多く、次いで、「従業員の制度の認知度が向上」(30.2%)、「優秀な女性従業員の採用・確保ができるようになった」(26.6%)、「顧客に対するイメージアップ」(25.5%)、「女性従業員の制度利用が進んだ」(24.6%)の順となる。

    また、「くるみん」認定取得効果と行動計画策定・推進効果を整理したのが図表3である。両者の差に着目すると、行動計画の策定・推進効果に比べて、「くるみん」認定取得の効果のほうが、「学生に対するイメージアップ」(33.8ポイント)、「顧客に対するイメージアップ」(17.9ポイント)、「優秀な女性従業員の採用・確保ができるようになった」(12.9ポイント)の順で高くなっている。行動計画の策定・推進効果に比べて、「くるみん」認定取得の効果は、学生や顧客に対するイメージアップや人材確保に効果を感じているようだ。

    一方、「くるみん」認定取得の効果に比べて、行動計画の策定・推進効果のほうが、「年次有給休暇の取得率・取得日数が上昇・増加した」(21.9ポイント)、「時間外労働の削減が進んだ」(15.8ポイント)、「男性の育児休業取得率が上昇した」(12.7ポイント)、「男性従業員の制度利用が進んだ」(12.5ポイント)の順で高くなっている。「くるみん」認定取得の効果がイメージアップや人材確保に主眼があったのに対し、行動計画の策定・推進は制度活用など目標達成面において効果を感じているようだ。

    図表3 行動計画策定・推進効果及び「くるみん」認定取得効果(MA)

    図表3画像

    このほか、以下のような特徴が明らかになった。

    • 回答企業(n=1,762)の「くるみん」認定に関する課題と要望については(複数回答)、「認定手続きの負担軽減を図ってほしい」(52.6%)、「くるみんの社会的な認知度を高めてほしい」(50.7%)、「認定の具体的なメリットを増やしてほしい」(50.0%)が5割台で上位に並ぶ。
    • 回答企業(n=1,762)の今後の「くるみん」認定取得意向は、「継続したいと思う」(54.1%)と「まあ継続したいと思う」(20.0%)の合計は74.1%で、回答企業の7割超が継続取得の意向を示した。
  3. 「プラチナくるみん」取得状況

    回答企業(n=1,762)の「プラチナくるみん」認定取得状況については、「取得している」が11.8%、「今後、ぜひ取得したい(現在、検討中)」が37.1%、「取得予定はない」が49.7%で、半数弱が取得の予定がないと回答した。

    「プラチナくるみん」認定取得企業(n=208)に対して、「くるみん」認定時と比べて、「プラチナくるみん」認定取得であがった効果を複数回答で聞いたものが、図表4である。

    それによると、「学生に対するイメージアップ」(70.7%)を挙げる割合がもっとも高く、次いで、「男性従業員の制度利用が進んだ」(49.0%)、「男性の育児休業取得率が上昇した」(45.7%)、「従業員の制度の認知度が向上」(44.7%)、「制度利用に対して職場で協力する雰囲気ができた」(39.9%)の順となる。「プラチナくるみん」認定の取得により、7割の企業が学生に対するイメージアップを実感しているようだ。

    図表4 「プラチナくるみん」認定取得効果(n=208 MA)

    図表4画像

政策的インプリケーション

「くるみん」認定取得企業の半数超が学生に対するイメージアップの効果を実感している。また、「プラチナくるみん」認定取得企業では、上記の効果に加えて、男性従業員の制度利用や育児休業取得率の上昇をあげる企業が多い。

政策への貢献

調査結果は第33回労働政策審議会雇用環境・均等分科会(2020年11月12日)新しいウィンドウにおける資料2「次世代育成支援対策推進法の施行状況」新しいウィンドウにおいて活用された。

本文

全文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。

研究の区分

情報収集

研究期間

令和2年度~3年度

調査担当者

郡司 正人
労働政策研究・研修機構 調査部長
奥田 栄二
労働政策研究・研修機構 調査部 主任調査員
遠藤 彰
労働政策研究・研修機構 調査部 主任調査員補佐

*肩書きは調査実施時点。

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