調査シリーズNo.184
多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査(企業調査・労働者調査)
- 記者発表『多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査(企業調査・労働者調査)』(PDF:932KB)(平成30年9月11日)
概要
研究の目的
近年、企業において女性・高齢者・外国人材等の活用が進む中、職場における人材の多様性が高まっている。これらを踏まえ、多様な人材一人ひとりの能力が発揮され、いきいきと働き続けられる職場環境の構築に向けた人材マネジメントに関する諸課題を明らかにすることを目的として、企業・労働者アンケート調査を行った。
本調査は、厚生労働省労働政策担当参事官室の要請に基づき実施したものである。
研究の方法
アンケート調査
- 調査方法:郵送配布、郵送回収。
企業調査では、信用調査機関の企業データベースにより、産業・従業員規模別に層化無作為抽出。 - 調査対象:
(企業調査)全国の従業員100人以上の企業12,000社(農林漁業、公務除く)。
(労働者調査)調査対象企業で正社員8人に配付(計96,000人)。 - 調査期間:2018年2月14日~3月2日。
- 有効回収数
(企業調査) 2,260件(有効回収率:18.8%)
(労働者調査)12,355件(有効回収率:12.9%)。
主な事実発見
- 企業調査では、雇用人員の過不足状況は、正社員で「不足・計」(「大いに不足」「やや不足」の合計)が59.7%と6割弱を占める。正社員の人材の種類ごとに、「不足・計」の割合をみると、「現場の技能労働者」が64.4%でもっとも高く、次いで、「社内の人材マネジメントを担う中核的な管理職」(56.5%)、「社内のIT化を推進する人材」(56.4%)、「マーケティングや営業の専門人材」(47.9%)、「財務や法務の専門人材」(45.9%)、「研究開発等を支える高度人材」(33.2%)、「海外展開に必要な国際人材」(26.0%)となっている。
- 企業調査では、性別、年齢、国籍、雇用形態、職種等の観点から、① 5年前と現在の比較(これまで)でみると、社内人材の多様化が「多様化推進・計」(「多様化が大幅に推進」「多様化がやや推進」の合計)は、48.5%と約半数を占めている。一方、② 現在と5年先の比較(今後)では、「多様化推進・計」が63.0%と、今後のほうが、14.5ポイント高くなっている。
- 企業調査では、過去5年間における限定正社員という働き方を導入したことによる効果について、各項目での肯定的割合(「そう思う」「ややそう思う」の合計)は、「人材の定着率が高まった」(54.7%)がもっとも割合が高く、次いで、「社員のワーク・ライフ・バランスが向上した」(49.7%)、「人材の採用がしやすくなった」(48.9%)、「社員のモチベーションが上がった」(35.9%)、「社員の労働生産性が向上した」(34.2%)、「社員の専門性が向上した」(30.1%)となっている(図表)。
- 労働者調査では、勤め先企業の働き方が「限定正社員」とする者で、いわゆる正社員と就労状況・処遇・昇進を比較して、不満が「ある」とする割合は31.1%となっている。不満が「ある」とする者の具体的な事柄としては、「不合理な賃金差がある」が56.6%でもっとも多く、次いで、「共有がしっかりとなされない情報が多い」(36.8%)、「不合理な昇進スピードの差がある」(33.5%)などとなっている。
- 企業調査では、高度専門人材の採用企業において、5年前と現在を比較した高度専門人材の活用の効果について、各項目での肯定的割合(「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」の合計)は、「イノベーションが促進された」(44.0%)がもっとも割合が高く、次いで、「労働生産性が向上した」(40.3%)、「企業収益が改善した」(39.9%)、「社員のモチベーションが向上した」(37.4%)、「海外市場で稼ぐ力が向上した」(14.0%)となっている。
- 企業調査では、「副業・兼業の許可する予定はない」が75.8%ともっとも割合が高く、「副業・兼業を許可している」は11.2%、「副業・兼業の許可を検討している」が8.4%である。副業・兼業を許可している理由(複数回答)は、「従業員の収入増加につながるため」が53.6%ともっとも多い。一方、「副業・兼業の許可する予定はない」とする企業の副業・兼業を許可しない理由(複数回答)は、「過重労働となり、本業に支障をきたすため」が82.7%ともっとも多く、次いで、「労働時間の管理・把握が困難になる」(45.3%)、「職場の他の従業員の業務負担が増大する懸念があるため」(35.2%)などとなっている。
- 労働者調査で、今後、5年先を見据えて副業・兼業の実施に積極的な者(「新しくはじめたい」「機会・時間を増やしたい」と回答した者)は37.0%と4割弱を占めている。副業・兼業を望む理由(3つまでの複数回答)は、「収入を増やしたいから」が85.1%でもっとも多く、次いで、「自分が活躍できる場を広げたいから」(53.5%)、「様々な分野における人脈を構築したいから」(41.7%)、「組織外の知識や技術を積極的に取り込むため(オープン・イノベーションを重視)」(36.6%)などとなっている。
- 一方、労働者調査で、今後、5年先を見据えて、副業・兼業の実施に消極的な者(副業・兼業を「するつもりはない」「機会・時間を減らしたい」と回答した者)に対して、副業・兼業を望まない理由(3つまでの複数回答)を尋ねたところ、「過重労働となり、本業に支障をきたすため」が61.6%ともっとも多い。
政策的インプリケーション
性別、年齢、国籍、雇用形態、職種等の観点からみた社内人材の多様化は進展しており、とくに、女性や高齢者の採用意欲も高い。規模が大きくなるほど、限定正社員など多様な正社員の活用もみられ、採用・定着面での効果をあげる企業も多い。今後、多様な人材の雇用管理や人材育成の在り方を検討する必要がある。
政策への貢献
平成30年版 労働経済白書での基礎的データの提供。
本文
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研究の区分
情報収集
研究期間
平成30年度
調査担当者
- 荻野 登
- 労働政策研究・研修機構 労働政策研究所 副所長
- 新井 栄三
- 労働政策研究・研修機構 調査部 主任調査員
- 奥田 栄二
- 労働政策研究・研修機構 調査部 主任調査員補佐
データ・アーカイブ
本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.105)。