調査シリーズNo.178
大学生・大学院生の多様な採用に対するニーズ調査

平成30年3月23日

概要

研究の目的

本研究の目的は、大学生・大学院生の多様な採用に対するニーズの実態を把握することである。

研究の方法

調査の方法は、Webサイトを活用したアンケート調査である。調査の対象は、就職活動支援サイト「マイナビ」の保有するモニターに属し、2018年3月以降に入社予定で就職活動をしている、あるいは就職活動をしていた大学生および大学院生5,601人である。調査期間は、2017年7月5日~7月13日である。

主な事実発見

  1. 希望する就職先企業
    • 学生合計で見ると、「勤務地が限定される全国規模の企業」(約40.0%)、「全国転勤がある全国規模の企業」(約29.5%)および「海外展開もしている企業」(約27.3%)を希望する割合が高く、事業所を広域に展開している企業を希望している。
    • ただし、女子学生は、「勤務地が限定される全国規模の企業」(約47.0%)および「主に特定の地域に展開する企業」(文系:約32.7%、理系:約29.8%)を希望する割合が高く、勤務地が限定される企業を希望する傾向がある。
  2. 地域限定正社員への応募意向
    • 就職活動開始時に地域限定正社員への応募意向がある割合(「是非応募したい」と「(限定のない一般の正社員と)処遇に大きな差がなければ応募したい」の合計)は、学生合計で約72.6(=24.5+48.1)%である(図表1)。とりわけ女性の文系学生では約85.3%と、応募意向のある割合が相対的に高い。なお、応募意向のある学生の現在の居住地域は、約64.9%が東京・名古屋・大阪の三大都市圏である。

      図表1 就職活動開始時の限定正社員に対する応募意向(単位:%)

      図表1画像

    • 勤務限定正社員への応募意向のある学生が希望する勤務地は、「現在の居住地域」が約76.6%でもっとも割合が高く、ついで「高校卒業時の居住地域」(約42.0%)である。勤務地として希望する「現在の居住地域」は「大学(大学院)の所在地域」とほぼ同じ地域であるが、勤務地として希望する「高校卒業時の居住地域」は「現在の居住地域」と約2割乖離している。
  3. 職務限定正社員への応募意向
    • 就職活動開始時に職務限定正社員への応募意向がある割合は、学生合計で約58.0%である(図表1)。とりわけ女性の理系学生では約67.5%と、応募意向のある割合が相対的に高い。
    • 職務限定正社員の応募を希望する理系の学生は、「大学・大学院の専攻に直結した仕事」(男性:約62.7%、女性:約54.3%)を希望する割合が高い。ただし、男性の文系学生は、「一般事務の仕事」および「営業の仕事」を、女性の文系学生は、「一般事務の仕事」を希望する割合が高い。
  4. 勤務時間限定正社員への応募意向
    • 就職活動開始時に勤務時間限定正社員への応募意向がある割合は、学生合計で約51.8%である(図表1)。とりわけ女性の理系学生では約61.3%と、応募意向のある割合が相対的に高い。
    • ただし、勤務時間限定正社員の応募を希望する学生の約82.0%は、残業がないことを希望しており、所定内勤務時間が短いことを希望する割合は低い。
  5. 就職予定先企業での働き方
    • 内定を得て就職活動を終えた学生の就職予定先企業での働き方は、「限定のない一般の正社員」が約67.7%、「地域限定正社員」が約21.8%、「職務限定正社員」が約16.1%、「勤務時間限定正社員」が約2.8%となっている。
    • 就職活動開始時の限定正社員への応募意向と就職予定先企業での働き方を比較すると、地域限定正社員への応募意向のある学生の約28.6(=735人/(791人+1,779人)×100)%が就職予定先企業で地域限定正社員として働く予定である(図表2)。同割合は、職務限定正社員では約24.3%、勤務時間限定正社員では約4.4%となっている。

      図表2 地域限定正社員への応募意向と地域限定正社員としての就職予定(単位:人)

      図表2画像

  6. 希望する働き方の変化
    • 調査時点で就職活動を続けている学生のうち希望する働き方に大きな変化のない学生は約89.4%だが、限定正社員や契約社員から一般の正社員希望に変えた学生が約7.1%いる。希望する働き方が変わった主な理由は、「希望している企業のなかでは、その働き方でしか求人している企業がないから」が約35.2%、「その働き方でしか内定を得られないと思うから」が約23.5%である。
  7. 通年募集・秋季募集
    • 通年募集・秋季募集が多ければ良いと思う学生は、合計で約60.6%である。通年募集・秋季募集が多ければ良いと思う主な理由は、「就職活動に時間をかけて自分に合った企業を見極めたいから」が約61.2%、「希望する就職先の候補が複数あり、採用スケジュールが重なるのを避けたいから」が約47.9%である。

政策的インプリケーション

大学生および大学院生の希望する働き方と就職予定先企業での働き方とのミスマッチの解消を支援する方策を考える上で、大学生および大学院生の採用に対するニーズの実態がわかる情報は有益である。

政策への貢献

「働き方改革実行計画」に掲げられる多様な選考・採用機会の拡大に向けた厚生労働省の検討会における議論や指針策定の際等の基礎資料となる予定である。

本文

全文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。

研究の区分

研究期間

平成29年度

執筆担当者

中野 諭
労働政策研究・研修機構 副主任研究員

データ・アーカイブ

本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.102)。

入手方法等

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