調査シリーズ No.102
勤務医の就労実態と意識に関する調査
概要
研究の目的と方法
医療従事者(勤務医等)は、長時間労働をはじめとして厳しい勤務環境に置かれている。また、医療従事者の偏在など需給面での問題も顕在化するなかで、将来にわたり医療従事者の労働需要を充足し、安全・安心の医療提供体制を構築・維持していくために、医療従事者の労働条件の改善や需給調整の仕組みの再構築など、労働政策的観点からの総合的な対応が喫緊の課題となっている。そこで、当機構では、医療従事者のなかでも、勤務実態などを把握できる調査が比較的少ない勤務医を対象とするアンケートを実施した。
調査は、民間の医療領域専門調査会社が保有する医師モニターのうち、全国の20床以上の病院に勤めている24歳以上の勤務医を対象にインターネットを用いて実施した。調査実施時期は、2011年12月1日から12月9日。配信数は、11,145人であり、無効票を除いた有効回答数は3,467票(有効回収率31.0%)である。
主な事実発見
- 他の勤務先を含めた1週間当たりの全労働時間の平均は53.2時間で、「60時間以上」(「60~70時間未満」「70~80時間未満」「80時間以上」の合計)の割合は40.0%となっている。昨年1年間に実際に取得した年次有給休暇の取得日数は、約半数(47.2%)が「3日以下」(「0日」「1~3日」の合計)となっている。
- 医療業務に携わるうえでの満足度をみると、「満足である」(「満足している」「まあ満足」の合計)とする割合でもっとも高いのは、「勤務先(職場全体)」(64.0%)であり、次いで、「勤務先の仕事の質、内容」、「患者(とその家族)との関係」などとなっている。一方、「不満である」(「不満」「少し不満」の合計)とする割合がもっとも高いのは、「給料・賃金の額」(37.7%)であり、次いで、「休日・休暇の日数」、「研究等スキル向上やキャリアアップに費やす時間」、「労働時間の長さ」などとなっている。
- 勤務医の勤務環境改善の障害事由は、「地域・診療科による医師数の偏在」が53.8%ともっとも多く、次いで「医療行為以外の業務量の多さ」、「絶対的な医師不足」、「時間外診療、救急診療の増加」などとなっている(図表1)。勤務医の勤務環境を改善するための方策について尋ねたところ、「医師数の増加(非常勤・研修医を含む)」が55.4%ともっとも多く、次いで「当直明けの休み・休憩時間の確保」、「他職種(看護師、薬剤師等)との役割分担の促進」、「診療以外の業務の負担軽減」などとなっている(図表2)。
政策的含意
地域・診療科によって医師不足感を感じる割合が高くなっており、長時間労働や休日を取得しづらい実態が確認されている。仕事や職場に対する満足度は高いが、収入面や休暇の取りづらさ、長時間労働などに不満を抱く者も多い。地域・診療科による医師不足の解消のみならず、高齢化社会の下での過度な医療需要の抑制への対策を行うとともに、医師が医療業務に集中できる環境整備や休暇の確保等による疲労回復など、勤務環境の改善策が求められる。
政策への貢献
医療従事者の勤務環境の改善は、厚生労働省で検討課題となっており、本調査はそのための基礎資料として使用されている。
本文
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調査実施者
- 郡司 正人
- 労働政策研究・研修機構調査・解析部主任調査員
- 新井 栄三
- 労働政策研究・研修機構調査・解析部主任調査員
- 奥田 栄二
- 労働政策研究・研修機構調査・解析部主任調査員補佐
研究期間
平成23年度
データ・アーカイブ
本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.154)。