調査シリーズ No.101
地方自治体における雇用創出への取組みと課題
概要
研究の目的と方法
地域雇用対策の主体が国から地方自治体へと移り、地域雇用対策も地域の状況を踏まえて、個々の地域の特徴を活かすようなものへと転換しつつあり、これまで以上に地方自治体、とりわけ市区町村が果たす役割が重要になっている。
JILPTでは過去2回、全国の都道府県および市区町村を対象として雇用創出の取組みに関するアンケートを実施してきたが、2011年11月に第3回目の調査を実施したので、その結果を速報的にとりまとめた。
主な事実発見
- 雇用創出の取組み状況は、都道府県では「知事のマニフェスト・公約に雇用創出が挙げられている」、「雇用創出のビジョン・計画をとりまとめたり、総合計画に雇用創出のための取組みを掲げている」、「企業誘致のためのトップセールスを行った」、「雇用創出のための施策(業務の委託などを含む)を実施した」などが、市区町村では「雇用創出のビジョン・計画をとりまとめたり、総合計画に雇用創出のための取組みを掲げている」、「雇用創出のための施策(業務の委託などを含む)を実施した」、「雇用創出のための施策を新たに実施した」などが多い(図表1、2)。
- これまで実施した雇用創出のための取組みについての主観的な評価は、都道府県では半数以上が「概ね期待していたとおりの雇用創出効果があった」と肯定的な回答を寄せているが、市区町村では半数近くが「現段階では雇用創出効果はわからない」と回答している。
- 地域再生計画、雇用創出の基金による事業(ふるさと雇用再生特別基金事業、緊急雇用創出事業、重点分野雇用創造事業)については、 (1)地域再生計画の認定を受けた地方自治体のうち、都道府県の1/4近くが「概ね期待していたとおりの雇用創出効果があった」、市区町村の4割以上が「期待していた以上の雇用創出効果があった」または「概ね期待していたとおりの雇用創出効果があった」と回答している。 (2)「ふるさと雇用再生特別基金事業」については都道府県、市区町村とも現段階まで肯定的な評価が与えられている。 (3)「緊急雇用創出事業」についても都道府県、市区町村ともに現段階まで肯定的に評価している。 (4)「重点分野雇用創造事業」についての現段階までの主観的評価は都道府県、市区町村とも肯定的である。
- 事業継続中を含め約14%の市区町村がパッケージ事業に採択され、そのうち2/3がパッケージ関連事業にも採択されている。パッケージ事業の雇用創出に関する効果は、「新規起業による雇用創出」「既存の地元企業における雇用創出」「既存の地元企業における雇用減少の抑制」「正規従業員の増加」「非正規従業員の増加」「間接雇用の増加」「地域人材の育成」「観光客の増加、観光関連産業の売上増加」「その他の雇用や人材育成関連の効果」などで、雇用創出以外の効果に関しては、「地域が持つ資源の再発見、活用」「国、労働局、ハローワークとのネットワーク形成」「雇用創出策の企画・立案のノウハウの蓄積」「雇用創出策の実施のノウハウの蓄積」などで各々肯定的な傾向が強い。
政策的含意
地方自治体が雇用創出に取り組むにあたって直面する課題としては財源の確保、雇用創出に関する情報、雇用創出に取り組む人材の不足が挙げられている。これを反映して、国に期待することとしても財源の支援、雇用創出に関する情報およびノウハウの提供、人材育成の支援が求められている。
※図表をクリックすると拡大表示します。(拡大しない場合はもう一度クリックしてください。)
※図表をクリックすると拡大表示します。(拡大しない場合はもう一度クリックしてください。)
本文
全文ダウンロードに時間が掛かる場合は分割版をご利用ください。
- 表紙・まえがき・執筆担当者・目次(PDF:745KB)
- 第1章 調査で確認したかったことと調査の概要
第2章 地方自治体の雇用状況について
第3章 地方自治体における雇用創出の取組み状況(PDF:1.7MB) - 第4章 国による地域雇用創出の支援施策をめぐって(1)
第5章 国による地域雇用創出の支援施策をめぐって(2)(PDF:1.6MB)
調査実施担当者
- 渡辺博顕
- 労働政策研究・研修機構 労働経済分析研究担当 副統括研究員
研究期間
平成23年度