調査シリーズ No.96
非正規労働者の組織化に関するヒアリング調査

平成24年 3月30日

概要

研究の目的と方法

フルタイム勤務の契約社員やパートタイム労働者などのいわゆる非正規労働者の組織化に取り組む労働組合が増えている。その背景や理由については、職場における非正規労働者の拡大による正社員組合員割合の低下などが、典型例と言える。

しかし、組織化を果たした労組が、その後、企業内でどういった成果をあげているのか、非正規労働者の組合員の拡大により、組合役員への参画状況や組合活動にどのような影響が及んだのか、また、組織化したことで新たに生まれた課題はないのか、などの実態はまだ明らかにされていない部分も多い。そこで本調査では、特に組織化後の側面に着目し、組織化を果たした労組(11事例)に対するヒアリング調査を実施した。また、最近では個人請負やフリーランスなど、独立自営という働き方を選択する人も増えてきていることから、個人請負などの労働者に関する組織化の最新動向も探った。

主な事実発見

調査した11事例をみる限り、組織化後の成果を観察すると、国内企業の全体的な業績低迷という環境もあいまって、「組織化→処遇改善(賃金アップなど)」のような単純な図式での成果への結びつきのケースは少ない。しかし、処遇以外の面で、組織化で得られるメリットはさまざまあることが把握できた。

具体的には、職場における社員間のコミュニケーションの促進、現場からの意見の経営への伝達機能の強化などである。また、労組自身の観点から言えば、非正規労働者の組織化はこれまで正社員中心に運営してきた組織体制・組合活動の振り返りの好機となるが、非正規労働者の組合役員が活動しやすくなるよう、工夫を施している組織もみられた。

個人請負などの労働者のなかには、労組法上の労働者性が問われるケースも増加している。調査で取り上げた、まだあまり明らかにされていない集団的労使関係の枠外にある労働者の組織化は、労組にとっての活動の新領域となる可能性がある。

図表 事例を該当分野で整理した場合の概念図

図表 事例を該当分野で整理した場合の概念図/調査シリーズNo.96(JILPT)

政策的含意

非正規労働者が労組に組織化され、組合員となるということで、集団的労使関係の枠内で自分たちの声(ボイス)を経営側に届ける、また、紛争があった場合にその枠内で処理するという手段を持たなかった非正規労働者が、その機会を自ら手にすることになる。今後、組織化が進むと、労使関係にかかる法制や集団的労使関係における紛争処理のあり方について、一定の役割を担うことが期待される。

本文

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執筆担当者

荻野 登
調査・解析部長
新井栄三
調査・解析部 主任調査員
荒川創太
調査・解析部 主任調査員補佐
渡邊木綿子
調査・解析部 主任調査員補佐
遠藤 彰
調査・解析部 主任調査員補佐
西村 純
研究員(就業環境・ワークライフバランス研究部門)

研究期間

平成23年度

入手方法等

入手方法

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