調査シリーズ No.90
ジョブ・カード制度における雇用型訓練受講者の追跡調査
―『第1回・第2回転職モニター調査』結果速報―

平成24年 3月 9日

概要

研究の目的と方法

本調査シリーズは「ジョブ・カード制度の現状と今後の方向性のための研究」の経過報告としてとりまとめたものである。本研究の最終的な目的は、ジョブ・カード制度という2008年4月に新しく導入された政策の効果を計量的に検証することである。

この研究目的を達成するために、キャリア・コンサルティングを受けた求職者を対象に全5回の個人パネル調査『転職モニター調査』を実施したが、2012年3月1日現在で調査は継続中である。

そこで、本調査シリーズは、データクリーニングが完了している第1回調査と第2回調査に関して、ジョブ・カード制度の有期実習型訓練(基本型)(以下、基本型訓練)の受講と求職者の就職状況との関係についてクロス集計を行い、暫定版として報告するものである。

ただし、ジョブ・カード制度の政策効果を厳密に示すためには、次年度以降に行う計量分析の結果を待たなければならず、現状では研究課題として残されている。

主な事実発見

  1. 求職者の3~6カ月後の就職状況を確認すると、就職した人は39.5%、公的な訓練を受講中は13.3%、働いていない人が47.3%であった。
  2. 2010年9月以降に基本型訓練を受講した人の2011年3月時点での就職者割合は51.8%であるものの、公的な訓練を受講中の人が19.7%いるため、働いていない人は28.5%に過ぎない(表を参照のこと)。この未就職者割合は、公的な訓練を受けなかった人の未就職者割合の44.3%よりも15.8ポイントも低い。
  3. 基本型訓練受講者の特徴をみると、女性や学歴の低い人で前職が非正社員だった人たちが多いことが明らかにされた。この結果から、基本型訓練がキャリア形成機会のとくに少ない人に職業能力開発の機会を与える役割を果たしていることがうかがえる。
  4. 訓練を修了した人の就職後の働き方を確認した結果、基本型訓練の修了者で就職した人は、正社員・正職員として働いている人の割合が61.8%ともっとも高い。他方で、その他の訓練受講者や訓練非受講者で就職した人はパート等の非正社員として働く人の割合が高い。
  5. 基本型訓練の修了者の就職先は29人以下の中小企業の割合が高い。その他の公的な支援のある訓練を受けた人や公共訓練を受けなかった人は1,000人以上規模に勤めている人が多い。

    しかし、勤務先での雇用形態を確認すると、基本型訓練の修了者で29人以下の企業に就職した人のうち66.7%が正社員・正職員である一方、公共訓練を受けなかった人のうち1,000人以上の企業に勤めている人のうち正社員・正職員は24.1%、パート等の非正社員は50.6%、派遣社員(登録型と常用型あわせて)は21.6%とその多くが非正規雇用者である。

  6. 仕事の満足度の変化をみると、基本型訓練の修了者が前職とくらべて現職の満足度がもっとも大きく高まっている。また、前職とくらべた現職の月給ならびに時間給の変化をみると、基本型訓練の修了者がもっとも伸び率が高い。主観的な指標と客観的な指標の双方を使って訓練効果をみても、他の公的な訓練や訓練非受講とくらべて基本型訓練のプラスの効果が大きい。

政策的含意

基本型訓練を修了した人の就職者と未就職者の違いをみると、就職者のほうが30歳未満の人、前職離職後すぐに受講を始めた人の割合が高い。20歳代の人や離職後間もない人を積極的に基本型訓練に誘導することは効果的と考えられる。

政策への貢献

ジョブ・カード制度の効果を検証するための新たな取組みである。

図表 公的訓練の受講と2011年3月の就業状況(受講中も含む)<暫定値>

図表 公的訓練の受講と2011年3月の就業状況(受講中も含む)<暫定値>/調査シリーズNo.90(JILPT)

本文

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執筆担当者

原 ひろみ
労働政策研究・研修機構副主任研究員
山本雄三
青山学院大学経済学部助手
安井健悟
立命館大学経済学部准教授
高橋陽子
東京大学社会科学研究所特任研究員

研究期間

平成23年度

入手方法等

入手方法

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